六連星手芸部員が何か書くよ

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素晴らしきボーイミーツお姉さん『ペンギン・ハイウェイ』感想

『ペンギン・ハイウェイ』 スペシャルトレーラー - YouTube

 

学生時代の自主制作作品、『フミコの告白』と『rain town』で文化庁メディア芸術祭で2年連続受賞された石田祐康監督の、そしてスタジオコロリドの初長編作品『ペンギン・ハイウェイ』を観てきました。静動からリアルデフォルメまで、アニメーションの引き出しが物凄く広くて、全編通して全く飽きさせない素晴らしいアニメーションでした。夢パートの超作画とか『フミコの告白』を彷彿とさせるペンギンたちの疾走とか、色々と語りたい場面はありますが、とりわけ言及しておきたいのが「ペンギンサーカスの団長になれますよ」とアオヤマくんがお姉さんに言った次の瞬間、ペンギンたちでサーカス(アニメ演出技法)を描いたシーンですね。どのシーンもアニメで語ってます。もう、アニメが好きなら観てくれって感じです。以下、幾つかのテーマをピックアップして書いていきます。


・なぜ“おっぱい”が強調されるのか

アオヤマくん、いったい劇中で何回「おっぱい」って言ったんだろうって思うと同時に、なんであんなにお姉さんのおっぱいが強調されるんだろうと考えたんですが、お姉さんが歯科医院勤めなのを見て納得しました。お姉さんは歯医者さんではないですが、子供の頃に歯科で診察や治療を受ける時って、担当の方が若い女性の歯科医さんだった時に、こう…ね?そういう事ありませんでしたか?そのイメージからきてるんじゃないかなと思うんですよ。それにしても1日30分おっぱいの事を考えるのを公言するのは、子供の頃の黒歴史になっちゃう気がして後が怖い。そして、気にするの早過ぎなハマモトさんを前にして、大声で「おっぱい!!」って叫んじゃうアオヤマくん(厳密には気にしてるのはそういう事ではないですが)。アオヤマくんはお姉さんに夢中な事を冒頭から言っているので不快感とかはないんですが、他の女の子(というかハマモトさん)の乙女心にも気付いてあげてって感じです。でも、そこが子どもっぽくて良いですね。ある意味、ウチダくん(CV釘宮理恵さん、ここ重要)の方が俗世的な事に関してはアオヤマくんより大人であったと言えます。


・ハマモトさん可愛いよハマモトさん

全国のアオヤマくんがお姉さんに恋し始めて、それで全国のハマモトさんが泣くような事があったらどうしてくれるんだと思いました。半分冗談ですが、半分本気で。逆にリアル小学生は、ハマモトさんのいじらしい可愛さがわからないんじゃないかなぁ…。お姉さんに嫉妬して、感情表現豊かで、一生許さないとか、許せるかわかんないとか、でも、アオヤマくんがデリカシーの無さ全開で「合理的に想いを伝えるべきだよ」とかズカズカ言っていたように、肝心な事は言えなくて。チェスが超強くて相対性理論の本なんかも読んじゃうんですけど、どっちかというとフィールドワークタイプの研究者で、公私共にアクティブな知的なお転婆

ハマモトさんの魅力、わかるか?少年。アオヤマくん、そういうところだぞお前アオヤマくん。


・世界のヘンテコと謎解きについて

劇中で度々、今作の謎は相対性理論や『鏡の国のアリス』に関係あるモノである事が示唆されています。また、アオヤマくんのお父さんが「世界の果てが袋の内側にある」可能性について言及していますが、これがそのまま「海」の答えになっていましたね。ペン太が消えてしまった事とそのシチュエーションそのままをお姉さんで繰り返した事や、アオヤマくんにナスのナポリタンを振る舞いながら自分は口を付けていなかったお姉さんの描写など、謎解きの過程は丁寧に描かれていました。一つ惜しいなと思ったのがお父さんにアドバイスをもらっていたエウレカのシーンで、パズルを頭の中で組み立ててしまっていた点について、小学生なら大きな方眼紙に自由研究みたいに書いて欲しかったなと思います。でも、自分が演出で気になったのはここくらいでした。


・妹が見た夢、そのメタファ

映画を観てる最中は、アオヤマくんの妹(CV久野美咲さん。ここ重要、テストに出ます)が見た夢について、その内容はわかったんですが、このエピソードが挿入される意図までは解釈し切れませんでした(夢とは言及されてませんが多分そう)。一見すると唐突な、しかし、子供であれば誰もが経験するであろうこのエピソード。でも、よくよく考えてみると、妹が見たというお母さんが死んでしまう夢の情景は、おそらく、アオヤマくんが見た夢の情景と同様のモノであったのだろうと思います(夢パート作画:押山清高(!!)、橋爪陽平(新人さんみたいです))。つまり、お姉さんが消えてしまう夢の情景について、ありのままに感情を表出しないアオヤマくんに代わって、妹がその感情を表出して、その気持ちをアオヤマくんに汲み取らせる事で、自分の事としても整理させている…のではないかなと思います。アオヤマくんはこの恐怖に対して、クライマックスで立ち向かいながらお姉さんの元へと向かったわけですね。「泣くな、少年」って、幾らアオヤマくんでも、それは無理というものです。


・ボーイミーツお姉さん

お姉さんは小学生目線の方が魅力的に思えるかもしれません。そして憎いかな、この映画には観る人を子どもの感覚に誘う仕掛けがあるように思います。田んぼの畦道とか裏道の用水路側とか、「あー、無駄に遠回りしてこういうところ通ったなぁ…」って思ったら終わりです。この時、あなたはもう子ども。

で、ここからが肝心な話なのですが、この作品のジャンルは厳密にはおねショタではないと思うのです。この作品のジャンルは、SF、ジュブナイル、そして、ボーイミーツお姉さん。この作品、お姉さんが積極的にアオヤマくんにちょっかい出していくようなシナリオではないんですよね。お姉さんと関わった事で、アオヤマくんが世界のヘンテコに観察や実験などの科学的手法と漢気で立ち向かっていく物語です。


・関連作品

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『rain town』

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