六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

【R15+】『メイドインアビス 深き魂の黎明』度し難い感想と考察

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ネタバレ有りなので未視聴の方はブラウザバック推奨。

表現にもあまり言葉を選んでいないので、そういうのを目にするのも嫌という人もブラウザバック推奨。

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・これを書いてる人の感性について

まず、残虐さやグロテスクな表現についての認識に齟齬があるといけないので書きますが、一次創作のアニメや漫画については首や四肢が飛び散ろうと平気な質です。例えば『るろうに剣心 追憶編』や『人狼 JIN-ROH』を「表現も心理描写も残酷、残虐だとは思うけどアニメーションとしては芸術」と言い切るような人です。最近だと去年の『どろろ』は毎週すごく楽しみでした。好き好んでそういうジャンルを読んだり観たりはしないですが、面白ければそれらの要素は作品を避けるファクターにはならないといった感じでしょうか。今更ですが『メイドインアビス』も原作読者です。実写はホラーとかスプラッタとかに限らず、そもそもあまり観ないのでよくわからないです。そういった系統では子供の頃に『リング』シリーズや『ケイゾク』を観てたくらい?『劇場版ケイゾク』も小学生の時に観に行きました(嫌な子供だ)。

ただ、本件語る上ではあまり関係無いですが、二次創作でグロとか性暴力とか大っぴらにやったりタイトルやタグ付けて話題にしてる連中には吐き気がしますね。こっちは程度によりません。


閑話休題


・映像について

個人的には四肢の切断や皮の剥がれた死に顔、人体解体のビジュアルは、上記の通り吐き気がする程のものではありませんでした(精神性については醜悪だと思いますが)。むしろ、映像面で原作再現と捉えている方が多いのには若干の違和感があって、例えば最初に戦ったボンドルドをレグが殺害した後に、祈手が仮面を剥ぎ取るシーンで原作ではボカされていた死に顔がハッキリと描かれたじゃないですか。あの描写に関してしっかり描いたと評する方がいるのも解るのですが、自分は全く逆の感想を抱いていて、ああやって描かれた事でイメージが固定されて「一体どれほど惨たらしい死に顔なんだろう?」と想像する余地が無くなってしまったような印象を受けました。そこは原作通りあえてハッキリ描かない選択肢もあったのではないかなと。贅沢な注文ですけど。

戦闘描写は物凄く中割りが細かいシーンもあれば、敢えてカクつかせる感じで描かれてるところもあり、ある意味で実験的?に描かれてるような気がしました。エンドクレジットのエンディングアニメーションは主題歌も相まって非常に美しいので絶対に途中で帰ったらダメです。


・音響について

音響というか役者さん方のお芝居ですかね。個人的には見た目よりもこちらの悲痛さの方が辛かったです。レグが右腕を切断されるシーンの悲鳴も相当なモノでしたが、今回最も揺さぶられたのは、復活したボンドルドから一度逃げ延びた後、リコがプルシュカに向けて叫んだ「行っちゃだめぇえええ!!!!」でした。これは原作からしてそうですが、こうやって文字表記出来るような叫び声じゃないんですよね。物凄い殴り書きがされてる。これをどう表現するんだろうと思っていたのですが、アニメ版最終回でナナチが号泣するシーンでも感じた事なのですが、もう原作と同じ声で叫んでるって感じました。同時に、この時、本当にプルシュカが逝ってしまうのだと原作以上に突き付けられた思いがしました。実際、この時にプルシュカはカートリッジに加工されている真最中なわけで、この瞬間がこの映画にとっての“死”のクライマックスなのではないかなと思います。その決定的に何かが変わってしまった瞬間に今回の劇場版のリコの叫びを重ねてきた事で、非常に死が強調された演出、構成となっていたのではないかと思います。

アフレコに関しては、テレビシリーズの段階でどのように演技指導が練られていたかについて、その特集である「SOUND IN ABYSS」がアマプラでも公開されているので加入されてる方は是非御覧になって下さい。監督の作品に対する真摯さと本気度が伺えます。

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あと、これは音響の効果なのか演出の妙なのか分からないのですが、ボンドルドが登場した瞬間に劇場内の空気が急に重たくなって身体がシートに押さえつけられたじゃないですか。いやいや、冗談ではなく他にも似たような事を言ってる方がいるので間違いないですよ。あれ、どうやったんでしょうね?


・プルシュカというキャラクターについて

映画を観てプルシュカの本質は無垢だと思いました。身体付きはリコに比べて大人っぽいですし、ボンドルドから解剖の手解きを受けたりもしているプルシュカですが、ボンドルドや他の祈手との交流や仕草はまるで幼稚園児を見ているのかと錯覚する程に幼いです。今回、水瀬いのりさんの声が付いた事で内面の幼児性が増して外見とのギャップが原作より大きくなったように思います。これ以上に内面が成熟すると無垢はやがて無知や憎悪に変化してしまう気がしますが、その手前で留まっているからこそカートリッジの材料として機能した、という事なのではないかなと。なので、側から見る分には信頼していたパパに解体され利用され使い潰されたその死に様が悲惨極まりないように映りますが、実際のところの心情を推し量るのは不可能というものです。劇中で描かれた結果だけを見るのであれば、遺骸が命を響く石に変化した以上、人としては無垢なまま逝ったのではないかなとは思います。


・本作が地獄であるかどうか

ボンドルドのやっている事はゲス外道だと思いますが、そもそもアビスという世界が現実の一般常識や倫理観では推し量る事の出来ないモノであり、そういった感性を持ち込む事に意味があるのかが不明です。その点、やっぱり自分はどうあっても、現実の人間のある種の精神性や心理の方が遥かに恐ろしいし汚らわしいと思ってるので、ボンドルドみたいな外道のキャラであっても、論理的に構成されてるだけ遥かにマシだと思ってしまうというのが正直なところです。

 

アニメ「メイドインアビス」公式サイト