六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』感想と考察〜メタフィクションのレヴュー

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劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

テレビシリーズではガッツリ考察して物語を解体した一方、本稿は感想とも考察とも付かない何か。メタフィクションのレヴュー以外の項は蛇足かもしれない。どうせみんな同じ様な事を言ってるだろうから。


あらすじ

「私の舞台って何……?」

ひかりが去った聖翔音楽学園、華恋は自問自答を繰り返しながら進路を決められずにいた。劇団の見学へと向かう電車はいつまでも隣の駅に着く事はなく、その中で新たなるレヴューの幕が上がる。


※レヴュー名を全て記憶出来てないのでCP表記します


皆殺しのレヴュー

「これはオーディションじゃない」「みんな喋り過ぎ」と、ロンド・ロンド・ロンドのラストの雰囲気をそのまま纏った最恐の舞台少女ばななちゃんが全員を斬り伏せていく。当初は二本の刀のうち輪だけを使い戦うがそれでも全員を圧倒、並走する電車に舞が運ばれてきた後は無双と言っていい。日本刀が電車のドアに挟まれて運ばれ、「来たか……」とそれを一瞥して射出される刀を受け取るのを筆頭としたブッ飛んだ一連のシーン。そういえば本作の監督はイクニ監督直系の演出家であると同時にシンフォギアのアニメーターだった事を思い出した人も多いのでは?新たな舞台はキリンとばななちゃんの共犯関係で作られている……ように見える。


まさあめ

レヴューではないです。主キャラ9人のレヴューだけで尺はカツカツだと思ってたので全く心の準備が出来て無かったところ、序盤のばななちゃんの進路面談シーンに併せて伏線を張られ唐突かつ自然にブッ込まれた舞台脚本と演出の二人の物語。

いや、待って聞いてない。

そんな“月明かりだけが照らす部屋で手を握る二人”みたいなのあるなんて聞いてない。これじゃ“脚本と演出にペースを握られるよ?”とメタ的に暗示されてるようなモノ。


ふたかお

カップルその1。黙って進路を決めてしまった双葉に対して「私の側で見ててくれる言うたんは嘘やったんか」と迫る香子。香子は「お前の側にいるのに相応しいように」と応える双葉を「相応しいって何?鬱陶しい」と斬り捨てる。どこまでが役で、台詞で、舞台なのかがレヴューの始まりと共に曖昧になっていく。


まひかり

「どうしてひかりちゃんは華恋ちゃんを裏切ったの……?どうして演技しないの……?私、あなたが嫌いだった」と迫るまひるちゃんと、そんなまひるちゃんが怖過ぎて(違う)泣き出すひかりちゃん 。「まだまだ演技は下手だけど」って、つまり一連のヤンデレ狂気は演技では無く素が出ちゃってた、という含みがある。こわい。


じゅんななな

借り物の言葉を紡ぐ純那ちゃんに「全然響かない」と詰り責め立てるばななちゃん。ばななちゃんは今回の舞台の上では悪役を演じているように感じられた。だからこそ、最後の最後にそれを演じ切れずに泣いちゃったんじゃないかなって。あと、「が〜お」があまりにあざと過ぎるけど、照れとか一切無しで吠えるのが最高だった。役と本来の幼さが混在してたと思う。


真矢クロ

カップルその2。舞台人と悪魔の契約はゲーテファウストかなコレは。本来は「そなたはいかにも美しい」と悪魔と契約した側が名も無き民衆に言うんだけど、悪魔に扮したクロちゃんが「アンタ今までで一番可愛いわ!!」って言って「そうだ私は可愛い!!」って真矢様が返す。一体何を見せられてるんだ……?ふたかおも大概だったが、この二人はそれに輪を掛けてイチャイチャしてるのを超作画で表現されてるように見えた。互いの道は違わないし明日も一緒に、ですよ?「私の真矢/私のクロディーヌ」と互いに宣言し、互いに好意を全く隠さなくなった結果がこれだよ!!動物将棋に興じる二人といい一体何を見せられてるんだ!!

「あなたは美しい」もちゃんと最後に言ってますけどね。


かれひか

ひかりちゃんを追い掛けて同じ舞台の上に立つ為に、同じ劇団の入団して子役を演じ、バレエを学び、歌を学び、そうして聖翔音楽学園に入学した華恋。そんな華恋は舞台の上でひかりちゃんの事しか見えていなかった。観客がこんなに近い、ライトが眩しい、舞台が怖い、それに初めて気が付く華恋。

ひかりちゃんは自分が華恋のファンになるのが怖くて逃げ出した。

そんな風に似ている二人が立つ次の舞台は……。


メタフィクションのレヴュー

……の前にテレビシリーズの考察を。

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』考察のレヴュー 『スタァライト』とは? - 六連星手芸部員が何か書くよ
テレビシリーズが多層のメタ構造である事は考察した通りで、本作はその演出、シナリオを更に発展させた作品のように思われる。その構成はもはや物語の起承転結すら放棄し、時系列も過去と現在が入り乱れ、どこまでが役者としての舞台の台詞でどこまでが素のキャラクターの本音なのかが曖昧になっていく。今敏監督の『千年女優』の構成が近い作品になるかもしれない。

レヴューで相対するのは愛憎入り乱れた憎からず想う相手であり、一緒ににこやかに鍋やお菓子を囲んだ相手とは思えない程に強い言葉で罵り、蔑み、追い詰めていく。涙を流し、血を流し、その末に死すら体験し、華やかなだけでなく暴力的で残虐で、本当に同じタイトルを冠する作品なのかと思ってしまう程に。

でも、それらは許容される。されなければならないと思う。だって、舞台だから。台詞だから。役だから。暴力、病、死、そういうネガティブな体験は役に降り掛かるモノであって役者本人を傷付けるモノじゃない。本来なら。

ところが、本作は舞台の上での役と舞台少女個人の本心が酷く曖昧に混ざり合っている。それは台詞なのか本心なのか、傷付きは演技なのか本当に涙を流しているのかがわからなくなっていく。本来ならこんな事は有り得ない。病の役を役と自覚せずに演じると本当に精神を病んでしまうように、そんな事は演者にとって危険極まりない。やってはならない事。本作はそれを踏み越えている。ルールを逸脱している。

でも、それは本作を成立させるメタフィクションの上では許容されなければならないと思う。だって、『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』はアニメーションの中で演じられる舞台だから。“舞台のルールを逸脱した役者の役をアニメで演じる”事によって成立する物語だから。未成熟で曖昧な卒業から次へと向かう過渡期にある舞台少女達の悩みや苦しみを真正面から描く為には、メタフィクションであるからこそ描ける剥き出しの演出が絶対に必要だったのではないかなと。

 

以上

 

 

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参考、今敏監督作『千年女優

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