六連星手芸部員が何か書くよ

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-自分を見つめない彼だけが、本当の自分を想ってくれた- 『SSSS.GRIDMAN』考察と感想

『SSSS.GRIDMAN』最終話、本当に心動かす素晴らしいアニメでした。

でも、11話まで観た段階では、裕太が実はグリッドマン本人だったという展開に対して、凄く梯子を外された気持ちになっていたんですよ。じゃあ、合コンのストーキングしてたのは何だったんだとか、マックスさんに六花との事を聞かれて耳真っ赤にしてたのはどういう事だとか、百合で畳むのもそれはそれで良いけど、裕太がヒーローとして積み上げた関係性はどうなるんだとか。

それがまさか、アカネと六花の関係性、裕太の六花への想い、裕太がグリッドマンとしてアカネを救う理由、全てを説明し得る完璧な解答があるなんて思いもしませんでした…。本項ではその辺の諸々をざっくり書いていければと思います。


・整理整頓

<裕太は六花に何を言ったのか>

裕太にグリッドマンが憑依する1話直前の時系列では、おそらく裕太は六花に告白かそれに準ずる事をしていて、六花がbelieveを口ずさんでいた(良い事があった時に歌う)事から、これ自体は好意的に受け入れられていたように思われます。なので、記憶喪失のフリしてるならと怒っていたのは、裕太が六花に言った内容どうこうではなく、その事を忘れてしまっている事に怒っていたと捉えるのが自然でしょう。実際に絵面にするとどうだったんでしょうね?側から見ると、耳まで真っ赤にして言う事言った後に返事を聞くか聞かないかというタイミングで卒倒した感じでしょうか?


<本当のアカネの姿とは>

本作の舞台がアカネが創り上げた世界である事は劇中に説明された通りで、六花がアカネに贈ったパスケースの存在から、ラストカットで目覚めた少女こそが十中八九本来のアカネの姿でしょう。全貌は見えませんが、黒髪ロングで白いセーター(?)を着た彼女の姿は六花の容姿を連想させます。つまり、才色兼備容姿端麗誰からも好かれる奇跡のようなアバターとは別に、アカネは六花という本来の自分の容姿に似せた存在を創り出していたという事になります。アカネが本当になりたかったのは、完璧な存在などではなく、六花のようなたわいもない日常を過ごせる自分だったのではないでしょうか?


<何故グリッドマンが裕太に憑依したのか>

劇中で明言はされていませんが、六花の含みを持った「多分」という言葉に続く回想から、あの世界で唯一アカネではなく六花を見つめていたのが裕太です。つまり、才色兼備容姿端麗の奇跡のようなアバターではなく、本当のアカネに対して好意を持ってくれたのは裕太だけであり、言い換えると、本当にアカネの事を想うヒーローに成り得るのは裕太だけだったという事になると思います。記事タイトルに書いた通りアカネにしてみれば、「自分を見つめない彼だけが、本当に自分の事を想ってくれた」というわけです。よくこんな切ない設定考えたものですよね…。でも間違いなく、全ての関係性を説明し得る強固な設定です。またこれを踏まえると、アカネが裕太を刺した事に関して、どれ程までに彼女が追い詰められていたのかを窺い知ることが出来るかと思います。


・アカネと六花の関係性

さて、最終話のアカネの告白と真実を踏まえた上での9話の台詞、

「やっぱ良いねぇ六花は、本当に素直で」

いったいどれ程の想いを込めてこう言ったのかと思うと言葉が出ないですね…。前述した通り、おそらく六花は本来のアカネの姿、正確にはアカネがこうでありたいと願ったアカネの姿です。多分、観返したら至る所にこういう要素があるのだろうと思います。最終話でアカネは六花に対し、アバターに覆われていない自分の胸の内を告白しますが、これを踏まえて観返したら突拍子も無いところで泣いてしまいそうですね…。この二人の関係性をあれこれ言葉にするのは野暮というか、言葉にならないですね…。

※追記

10話において、アカネはジャンクショップに対し、

「自分が今までに捨てたものまで全部把握してるの?そういう人が要らなくなったものが集まるお店でしょここ?」

と発言しています。この街がアカネの作った箱庭である以上、この街で要らなくなったもの=アカネの要らなくなったものであるハズです。しかし、本当にアカネにとって不要なものであるならば、劇中で常にそうしてきたように、怪獣に踏み潰させて仕舞えば良いですよね?しかし、そうしなかった、あるいは出来なかったものが集まったのがあのジャンクショップであり、その最たるものがアカネの本来の姿である六花なのだろうと思います。アカネはツツジ台という箱庭の世界に逃げ込んでなお、自分自身を捨て切る事は出来ていないんです。


・百合だとかヘテロだとか

今回改めて実感した事として、これは『少女革命ウテナ』の樹里さん回について言及していた事なのですが、彼女に纏わる物語は男女間の、あるいは女性が女性に向ける愛憎のそれぞれが大きな感情として存在しているにも関わらず、それが非常に高いレベルで物語の中で両立されていたと思うんですね。そして、今回の『SSSS.GRIDMAN』を観て改めて思ったのですが、百合だのヘテロだのとかいう限定的なタグ付けは強力な物語の前では何の意味も為さないし、逆に言えば、強力な物語の中でならそれらは両立もする、という事なんじゃないかなと思います。よく「百合の間に男挟むな」とか言うじゃないですか。でも、今作で裕太は六花とアカネの双方を異なるベクトルで想っているし、積極的に二人に関わっていく。しかし、裕太が二人を想っている事は二人の関係性を成立させる上で絶対に必要な要素であって、二人とも意識的にせよ無意識的にせよ裕太に想われてる事はわかってる。物語を強固に成立させる上で「百合に男が関わる事」が一切異物にはなってないですよね。というより、百合とかヘテロとかいう限定的なタグ付けではなくて、もっと普遍的な人間関係の文脈の中に落とし込まれているように思います。当たり前の話なのかもしれませんが、結局は、関係性の上で物語を如何に成立させるかはクリエイターの腕の見せ所という事なんじゃないかなと。

 

・はっすとなみこ

あの世界では珍しく、アカネではなく六花さん推しで何かと気に掛けてくれるこの二人。ボイスドラマでもメインを張りまくっていた彼女たちですが、どうしてここまでピックされたのか。それに関しては、「アカネが自分とウマの合わない相手を殺していた事から、その中でもまだ生き残っている相手が彼女たち」という説もありましたが、裕太が本当のアカネ=六花を想ってくれたのと同様に、実際にはアカネの事を本当に気に掛けてくれていた存在と言えるのかもしれません。


・最後にオマケで一言

正義に殉じた悪役ヒーローが散ってしまうと聞いて、皆さん誰を思い浮かべます?私は『勇者特急マイトガイン』のブラックガインがまず思い浮かびます。ヒーローとして目覚める経緯はブラックガインとアンチくんとでは全然違うのですが、本作のアンチくんも散ってしまうのではないかと危惧していました。そんな不安は御見通しと言わんばかりに、アンチくんはアレクシスの強靭に倒れ、最後の力を振り絞って「アクセスフラッシュ」と呟いて目を閉じるわけですよ…。悪役ヒーローの最期としてこの上なく最高の最期だと思いました…。もうボロ泣きですよ…。


でも、本当の本当の最後。本当に素晴らしい悪役ヒーローでした…。