①2016年1月1日〜12月31日までに放送された『フリップフラッパーズ』から選定。
②1作品につき上限13話。
③順位は付けない。
放送日時順で記述。各話あらすじと見所を手短にレビュー。
『フリップフラッパーズ』1話「ピュアインプット」
祖母と二人暮らしの中学二年生の少女"ココナ"は、進路を決められず、迷う日々を送っていた。そんな彼女の元に、突然、"パピカ"と名乗る破天荒な少女が現れ、二人はピュアイリュージョン(以下、PIと表記)と呼ばれる不思議な世界へと迷い込む。そこには、見た事のない一面の銀世界が広がっていた。
アバンのパピカ脱走シーンから分かる通り、テレビシリーズとは思えないレベルで、とにかくアニメーションが動く作品。シナリオ面は、「やっと見つけた」「ココナみたいな匂い」等、終盤になってようやく(視聴者にも、パピカ本人にとっても)意味の分かる台詞も多く、Cパートの解答は10話においてようやく明かされた。
『フリップフラッパーズ』2話「ピュアコンバータ」
目を覚ましたココナを、いつもと変わらない日常が迎える。冒険は夢だったのかと訝しむココナだが、そんな彼女の元にパピカが再び現れる。PIへの冒険を拒絶するココナだが、彼女の大切な宝物"ユクスキュル"がそこへ迷い込んだことで、二人は再び不思議な世界へと吸い込まれていく。
PIの美術設計が1話のモノとは全く異なり、このアニメが並の労力では作られていない事を窺い知ることが出来る。また、後の話数で明かされたPIの正体から、今回はユクスキュルの心象が反映されている事が分かる。兎モチーフのデザインはその影響と思われるが、同時に『不思議の国のアリス』を連想させる。
『フリップフラッパーズ』3話「ピュアXLR」
砂漠を彷徨い歩くパピカを助けたのは、小さな井戸を頼りに暮らす、小人たちの集落だった。ココナとはぐれたパピカは、空から落ちて来た流れ星の話を聞き、それがココナだと確信する。同時に、集落を野盗が襲撃し、パピカはこれを迎撃するが、野盗を牛耳っていたのは、呪いの仮面に操られたココナだった。
1、2話とは打って変わり、冒頭からPIでの出来事が描かれる。本作初となる本格的な戦闘シーンが描かれ、キャラクターたちが所狭しと動きまくる。また、変身バンクも初公開となり、こちらの描き込みも凄まじい。ストーリーでは、ココナの幼馴染み"ヤヤカ"が本格的に物語の本筋に介入してくる。
『フリップフラッパーズ』4話「ピュアイコライゼーション」
「インピーダンスがぶれっぶれ」PIではぐれた理由をこう説明され、二人はお泊り合宿する事に。見掛けに反し、女子力や生活力の高さを見せるパピカに対し、何も出来ないと落ち込むココナ。そんな彼女をパピカが励まし、二人の距離が縮まっていく。そして二人は、夜空を見上げながら、流れ星に掛ける願い事を口にする。
本作初となる、PIでの冒険のない日常(?)回。これまで漠然と「集めれば願いが叶う」等と説明されてきたカケラ(アモルファス)だが、パピカが「内緒」、ココナが「家族に会いたい」と語った願い事が、物語の行く末を示唆する重要なキーワードになっている。日常回だが、細部まで描き込まれた画作りは健在。
『フリップフラッパーズ』5話「ピュアエコー」
見慣れた学校の景色とどこか似通った非日常。礼拝、読書、お茶会、そして、刺繍…、止まない雨が降る中で、繰り返される甘美な世界。「雨…好き…」「私も…割と好き…」指を絡めてそう囁いた二人は、潤んだ瞳で見つめ合い、夜の眠りに落ちて行く…。しかし真夜中に、ヤヤカがココナに覆い被さり…?
これまで控えめに(?)描写されていた百合要素が、前面に押し出された一話。しかし、演出は完全にホラーアニメのそれで、部屋の明かりを調整して視聴する事により、二人が如何に"親切な級友たち"に囲まれ、日々を過ごしていたかを知る事になる。3話に続き、クライマックスの時計塔でのアクションも必見。
『フリップフラッパーズ』6話「ピュアプレイ」
家庭崩壊と分裂する自我、逃げ込んだ先の優しいおばちゃん、手の震え、忘れていく日常、放置された郵便受け、繰り返される若年の思い出話…。「あなたは…どちら様でしたっけ?」そして、少女は逃げ出した…。PIの深部で、ココナとパピカは少女"いろ"となり、彼女の世界を追体験していく。
PIとは一体何なのか、それが朧げに明かされた一話。"いろ"がおばちゃんに再び出会い、世界が文字通り色付く光景は、言葉にならない感情を引き起こすと思う。しかし、この物語の顛末が次回で語られた事により、ココナ(と視聴者)はPIが現実に及ぼす影響とその是非を巡り、深く悩まされる事になった。
『フリップフラッパーズ』7話「ピュアコンポーネント」
かつて"いろ"だった少女は、誇らしげにマニキュアを塗った爪を二人に見せる。そして、描いていた絵を棄てた。PIでの出来事が彼女を変えてしまったのか…。思い悩むココナは、訪れたPIでパピカとはぐれ、誰もいない街を彷徨う。そんな彼女を、様々な姿をしたパピカたちが誘惑していくが…。
その人の為人や才能、魅力は、通り一遍の価値基準では測ることが出来ない事を突き付けた一話。再びPIの深部へと落ちかけたココナ。その手をパピカが捕まえた瞬間、ココナは誰が迷子になっていたかに気付く。変わらないハズのパピカを想うココナ…。そしてパピカは、シロツメクサの花冠をココナに被せた。
『フリップフラッパーズ』8話「ピュアブレイカー」
プールに落ち、ぶーちゃんに激突した二人が飛ばされたPIは、機械仕掛けの大都市だった。二人は、カケラが生み出した怪物に苦戦を強いられ、都市を管理する科学者に助けられる。彼から、変形メカ"ヴェルメリオン"と"ブラウアズール"を託され、二人が魂の叫びを上げた時、ロボットが真の姿を現した!!
まさかのスク水×戦隊シリーズ巨大ロボ。細部まで描き込まれた変形合体シーン、よく聴くと本編にマッチした熱い挿入歌、ツンデレ全開のヤヤカ等、見所満載。しかし、Cパートのパピカの一言は、それらの余韻を全て吹き飛ばした。ちなみに、挿入歌の歌詞が、テレビ放送版とweb配信版(及びサントラ音源)で一部異なり、前者は「インピーダンスが高まっていく時」、後者は「インピーダンスが合わさっていく時」となっている。
『フリップフラッパーズ』9話「ピュアミュート」
パピカが自分に他の誰かの面影を重ねてる…。互いにギクシャクしたまま二人が飛ばされたPIは、何も無い世界だった。カケラの防衛トラップに囚われたココナが脱出を試みる一方、パピカと対峙するヤヤカ。彼女は、激昂してココナへの想いを叫び、パピカを下す。そして、自らの思い出を砕きながら、ついにはココナへとナイフを突き立てるが…。
ヤヤカの過去と覚悟が明かされた、観ていて辛い一話。ヤヤカの肉弾戦の描写は、蹴りの後によろめき、バランスを整える様に至るまで緻密に描かれ、重みと痛みを感じさせる。何も無い真っさらな世界は、ココナを捕らえて放そうとせず、鏡は二人の思い出を写していく。ここは、ヤヤカの心象なのだろうか…?
『フリップフラッパーズ』10話「ピュアジッター」
「ヤヤカが友だちで良かった」今までと変わらず声を掛けてくれるココナに対し、真実を打ち明けようとするヤヤカ。しかし、アスクレピオスの双子の介入はそれを許さない。基地からの脱出の最中、「自分だけ何も知らない…」と言って立ち止まるココナに対し、パピカはかつてのパートナー"ミミ"との思い出を語り始めるが…。
これまで謎に包まれていた、"ミミ"と呼ばれる少女の過去の一端が明かされる一話。回想の中でも今と全く変わらない姿のパピカに対し、幼い頃のソルトが登場した事で、これがかなり以前の出来事である事を窺い知る事が出来る。繰り返された日常こそが偽りであったという展開は、視聴者に大きな衝撃を与えた。
『フリップフラッパーズ』11話「ピュアストレージ」
ココナの姿を借り、暴走を続けるミミ。彼女は、アスクレピオスを壊滅させ、ソルトとパピカまでもを追い詰める。「私を止めて…」そうソルトに言い残し、PIへと姿を消したミミとココナ。PIに介入した事…パンドラの箱を開けた事…ミミが外へと飛び出した事…、全ての始まりは、ミミの胸に抱かれた幼子だった…。
アスクレピオスの目的、パピカとミミ、ソルトの関係性、そして、ココナの生い立ち…、あらゆる伏線が回収され、物語の中心は、PIを巡る冒険から、ココナの内面へと舞台を移す。新規劇伴がミミの愛情と狂気を彩り、非常に緊迫感のある演出がされていると思う。今回、パピカが初めて泣き崩れた様が心を抉る。
『フリップフラッパーズ』12話「ピュアハウリング」
ミミに囚われたココナを助けるため、パピカとヤヤカは、ソルトに託されたアモルファスを手に、これまでに巡ったPIを駆けて行く。数々の防衛トラップに行く手を阻まれる中、二人は砂漠で対峙した化物に追い詰められる。その時、アモルファスが輝き出し、ヤヤカは、自分の最も大切な宝物の名前を叫ぶ。
それとなく本編中でも何度か示唆されていたヤヤカの変身が満を持してついに描かれた。30秒のノーカット版を是非とも観てみたい。ソルトがペンダントにしていたミミの欠片は、パピカに託されてから黒ミミに取り込まれた後に「もう要らないから」とココナの涙の形で再度ソルトの手に渡ってる。それが今度はヤヤカに託され、ヤヤカの変身、ココナとパピカへの励ましに繋がってる。
『フリップフラッパーズ』13話「ピュアオーディオ」
「私と友だちになって!!」
そうして、幼い日のパピカとココナは、再び出会い手を繋ぎ、冒険が始まった。
「ココナ/パピカのことが大大大好きだから!!」
そうして、二人はこれからも手を繋いで、冒険は続いていく。
以上、13話。