六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

『ひるね姫』観賞に当たってのポイントまとめ

神山健治監督作『ひるね姫』、初日にさっそく観て来ました。個人的にはとても満足出来る内容だったし、凄く面白かったです。観賞しながら色々と想像出来る、とても楽しい映画でした。しかし、主要な映画レビューサイトの得点が異様に低い…、これはどういう事でしょうか?

個人的な見解としては、映画のストーリーを理解する上で、監督が設定したいくつかのポイントが、上手く観た人に伝わらなかったのではないかと思います。この記事では、そのポイントをいくつか抑えて考察していこうと思います。

・機械の国「ハートランド」について
"機械こそが人々を幸せにする"そのような王様の思想の元、24時間体制で国民が総力を上げて自動車を生産し続けるハートランド。その王国に生まれた王の愛娘エンシェンは、生まれながらにして機械を従える魔法を扱う魔法使い。幼いお姫様の魔法は人々を魅了するが、お姫様は同時に、国にオニを呼び寄せる魔女の力を持って生まれていた…。映画冒頭で語られる設定は概ねこのような内容です。あらすじだけ文字に起こすと、完全に昔話のファンタジー。しかし、お姫様が機械に魔法をかける際に使うアイテムは、どう見てもiPadライクなタブレット端末、画面上にはプログラムのソースコード、魔法とはいったい…?と、まずはここで疑問に思う方がいると思います。実は、この映画で定義される魔法の意味が分かると、この「ハートランド」の描写はとても面白いんです。

・"魔法使い"とその"魔法"が意味するモノについて
さて、神山監督がテレビシリーズを監督した『攻殻機動隊』、主人公草薙素子や敵対する人物を指す言葉として、劇中で度々登場する用語に「ウィザード級ハッカー」というモノがあります。おおよその意味は、コンピューター(主としてシステム面)やプログラムに対して、突出した技術を持った人物を指す言葉です。これは、漫画やアニメに登場する固有名詞ではなく、現実でも優れたハッカーがこう呼ばれている事に由来します。つまり、"魔法使い"エンシェンの正体とは、"ウィザード"と呼ばれる優れたハッカーであり、機械を操る"魔法"とはすなわち"、彼女が書いた"プログラムのソース"というわけです。この点を抑える事が出来れば、一見するとファンタジーとして描写されている「ハートランド」の世界が、劇中の現実で過去に起こった事、あるいは、今起こっている事のメタファである事がわかると思います。これを踏まえると、本作のシナリオは、決して難解なモノではないし、決して冒険活劇のパロディに留まるモノではないハズです。

・「ハートランド」の物語が持つ、もう一つの意味について
ハートランド」の物語がファンタジーとして描写される理由は、上記の他にもう一つある事が、劇中でココネから語られます。この点について全て書いてしまうと重要なネタバレになってしまうので、触りだけに留めますが、このお話は詰まる所、子どもに語って聞かせるための物語です。その為には、物語はファンタジーでなければならかったし、その上で、"機械の国で魔法を使う少女のお話"という設定は、劇中で起こった事をファンタジー風に描写する為には、最も相応しい題材であったと思います。

 

どうでしょうか?この映画は、登場人物の設定やファンタジー世界の描写、それがあのような形で語られた動機に至るまで、全て一本筋の通った物語であったと思います。