六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』考察のレヴュー 『スタァライト』とは?

この記事を読んでいる方にはまずいないと思いますが、もし未視聴の方がいらっしゃいましたら、YouTubeで1話が常時フルHD画質で無料配信されていますので、まずは是非ご鑑賞下さい。

 

少女☆歌劇 レヴュースタァライト』素晴らしい作品でしたね。昨今、原作枯渇による過去作のリメイクや続編を扱う作品が増えている中、平成最後の年にこんなにエネルギーに溢れたオリジナルアニメに出会えた事、本当に嬉しく思います。

さて、全話鑑賞された方ならわかると思いますが、本作のシナリオはキャラクター同士のやりとりや関係性、台詞回し、日常パートとレヴューのリンク、そして、演技のディレクションにおいてまで膨大な伏線が散りばめられており、とてもではないですが全てを考察してここに記す事は出来ません。そこで本稿では、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』において描かれた様々な「スタァライト」についての考察を試みます。


・キリンのレヴューとは何だったのか?

本作における最大の謎「キリンのレヴュー」ですが、「レヴューを勝ち抜いた舞台少女はトップスタァになり、どんな舞台を演じる事も出来る権利を得る」という報酬、「レヴューに参加したトップスタァ以外の舞台少女はきらめきを奪われる」という代償、そして、「予想もつかない舞台少女のきらめきを観たかった」というキリンの目的、それらが説明された一方で、その実態が何であるかについては、ついに明かされる事はありませんでした。

当初は『少女革命ウテナ』の薔薇の花嫁を奪い合う決闘(デュエル)と同様のものではないかとも言われていましたが、最終的には、似て非なる全く独自のものであったという感想を持たれた方が多いと思います。レヴュー1日目を舞台席で見ていた華恋が最初に言っていたように、舞台少女に課せられたレヴューとは、劇中劇『スタァライト』をなぞらえたものであり、扱われた課題も女神たちが背負っていた罪と全く同じでした。また、その悲劇の結末までもが酷似しており、これは『スタァライト』を模したレヴューというより、最初から『スタァライト』そのものを演じる事を課せられていたと考えた方が自然であると思います。

つまり、キリンのレヴューとは、劇中劇『スタァライト』と原典を同じくして、その解釈を変え、形を変え、神話の時代から現代にまで継承された『星祭りの夜の星摘み』そのものなのではないかなと思われます。


・華恋とひかりの人生としてのスタァライト

幼少期に出会った二人の少女は、同じ舞台の上(星祭りの夜)で再会する事を約束して別れます。ひかり(クレール)はその約束の前に星を摘もうとしてきらめき(記憶)を失い、華恋(フローラ)は約束を胸にそんな彼女と再開を果たします。二人の少女は舞台少女(罪を背負った女神)と戦い塔の頂にあるトップスタァ(星)を目指し、ついに二人で星の元へとたどり着きます。しかし、トップスタァになる事が出来る(星の願いを叶えられる)のは一人だけ。華恋(フローラ)は塔から落ち、星罪を負ったひかり(クレール)は塔の中へと幽閉されてしまいます。


上記が本作の11話までのあらすじとなりますが、舞台『スタァライト』の原典(※)シナリオそのままですよね。何故、二人の人生がここまで『スタァライト』に酷似しているのか。それは、キリンが最終話で私たちに語り掛けたように、この物語が私たち観客が観ている舞台であり、同時に、これは当初から明かされていた通りの事なのですが、私たちが観続けてきた作品のタイトルは何だったでしょうか。二人の人生が『スタァライト』に酷似しているのは、やはり、キリンのレヴュー同様に、その物語の原典が『スタァライト』だった為ではないでしょうか。


・様々な『スタァライト』の物語

さて、劇中でひかりを失った華恋は、ひかりが英国から持ち帰った『スタァライト』の原典(※)本を読み解き、自分が演じた第99回聖翔祭の『スタァライト』が本の内容と異なっている事に気付きます。少なくとも本作の劇中で描かれた『スタァライト』は…


・華恋とひかりの思い出のスタァライト

・第99回聖翔祭のスタァライト

・レヴューとしてのスタァライト

・ばななの想うスタァライト

・華恋の読み解いた原典(※)のスタァライト

・第100回聖翔祭のスタァライト

(※実際には原典ではなく、様々な解釈の一つかもしれません。『スタァライト』の原典を最古まで辿っていく事が出来るとしたら、キリンのレヴューの考察に書いたように、神話の時代の女神たちの物語に行き着くのではないかなと思っています。)


と、このように、劇中で言及された通り解釈の違いによるシナリオの異なる様々な種類があります。そして、華恋とひかりの人生もまた『スタァライト』であるという考察で触れた通り、物語の解釈の違いによる差異はこの作品そのものにも及んでおり、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』という作品もまた『スタァライト』の物語の一つであり、その物語の劇中劇もまた『スタァライト』である、という入れ子状の物語を形作っているのだと考えられます。何故、二人の少女の物語と劇中劇、キリンのレヴューの全てが酷似しているのか、それは、それら全てが原典が同じくする『スタァライト』だった為ではないでしょうか?

本作の9話においてひかりが華恋に語った(あるいは、ばななが純那に語った)『スタァライト』の物語は典型的な悲劇であり、「果たしてこれが胸を焦がす程の物語なのか?」などと思ったりもしましたが、本作を最後まで鑑賞した今、『スタァライト』の物語は「胸を焦がす程の物語だった」とそう思います。