・あらすじ
重力制御装置"ケイバーライト"の開発により、栄華を極めていたアルビニオン王国。しかし、革命によって共和国と王国とに分断された事により壁が築かれた首都ロンドンは、各国のスパイがひしめく影の戦争の最前線となっていた。王国領に属する名門校クイーンズ・メイフェア校に通う5人の少女達は、身分を偽り、共和国の諜報組織"コントロール"のスパイとして暗躍する。
#02「case1 Dancy Conspiracy」
共和国のスパイ"アンジェ"は、自身を王国のプリンセスと入れ替えるチェンジリング作戦のために、王位継承第四位"シャーロット"に接触する。作戦の最中、別命を受けた彼女だったが、接触したプリンセスからある取引を持ち掛けられる。
アンジェとプリンセスが、チェンジリング作戦の立案以前から旧知の仲であった事が明かされる、回想を除いた時系列の最初のエピソード。再会時の二人の会話のやりとりは、初見時では初対面を装うやりとりでしかないが、「case20」を視聴した後に改めて観返す事で、劇中でも屈指の名場面に変貌する。
#03「case2 Vice Voice」
取引によりコントロールに加わる事となった、シャーロットとその侍女であり友人のベアトリス。彼女達の元に、空輸される活版を奪取するよう指令が下る。姫の手引きでセキュリティが解除され、アンジェと共に船内に侵入するベアトリスだったが、彼女への不信感を拭えないまま任務に臨み…?
第1話で披露されたベアトリスの変声術の正体が明かされ、彼女達の背景にも只ならぬ事情がある事が突きつけられた。スパイ任務では、通信網を抑え、船内の状況やターゲットの所在を把握する手腕が見事。また、敵軍人とのカマの掛け合いは非常にスリリングで、対峙する一般兵ですらこの作品では一筋縄ではいかない。
#05「case7 Bullet Blade's Ballad」
日本からの外交特使を出迎えるシャーロット達の前に、特使暗殺を察知した佐賀藩士族の少女"ちせ"が現れる。暗殺者の名は藤堂十兵衞。移動中の列車を爆破、分断して強襲してきた彼を、ちせ達は迎え撃つが…。
異国の暗殺者"ちせ"による殺陣アクション回。作画はほぼ全てを江畑諒真氏が担当したという驚異の一話。彼女の生い立ちや背景は、やはりベアト同様に多くは語られないが、ちせ加入までのシナリオ進行とキャラ紹介の匙加減が絶妙と言わざるを得ない。ラストの「痛いの痛いの飛んでけー…」が辛過ぎる…。
#04「case9 Roaming Pigeons」
訓練と任務を重ねながら親交を深めて行く五人。しかし、プリンセスへの不信感を拭えないコントロール司令"L"は、ドロシーに対して彼女の二重スパイの可能性を探る密命を下す。そんな中、王国が無重力発生装置の小型化に成功したという情報が入り…。
プリンセスと王室との関係の一端が描写され、彼女を気遣う女王に対し、政略結婚を目論むノルマンディ公の存在から、王室が決して一枚岩ではない事が示唆された。任務ではドロシーのカーアクションが見所。そして、アンジェの残した「ダメ、歯止めが効かなくなる」という名言(?)は、多くの紳士淑女の妄想を掻き立てた。
#09「case11 Pell-mell Duel」
ちせが留学して四ヶ月、彼女は慣れない西洋文化と葛藤しながら、王国と共和国、どちらが日本の利となるかの見聞役の命を受けながらコントロールに身を置いていた。ある日、貴族の男子から祖国を侮辱されたちせは、プリンセスの後押しで彼と決闘する事になる。
放送順では後半の箸休め&コメディ回だが、時系列順に並べても、キャラやシナリオの確認、前半の総括的な位置付けの話である事が分かる。こうして打ち解けていったと思う一方、腹の探り合いは続いているのだろうか?スパイアニメのハズだが、当時の決闘のルールや使用武器、介添人や立会人の役割等が詳細に描写された。きんつばに魅了されるちせ。ちせ、可愛いよ、ちせ。
#01「case13 Wired Liar」
共和国への亡命を求めるケイバーライト研究者"エリック"の身柄を保護したアンジェ達のチームは、彼から亡命理由を聞く中で、妹も一緒に亡命させてくれるよう依頼を受ける。事実の裏付けを行う為に調査を行うアンジェ達だが、その末に彼の真意が明らかになる。
放送順では第一話だが、時系列的にはほぼ中間に当たる話。冒頭からハッタリの効いたアクションで魅せてくれる。また、スパイチームのそれぞれが役割に手慣れてきている事で、ストレス無く物語を観る事が出来る。主人公が敵諜報員の首に注射器を突き立てたり射殺したりと、初回から見た目に騙されていた事に気付いた視聴者は多いハズ。
#07「case16 Loudly Laundry」
神経ガスを用いた共和国要人の暗殺が"毒ガスジャック"として世間を震撼させていた。犯人が王国軍の軍服を着て犯行に及んでいた事から、アンジェ達は軍御用達の洗濯工場に潜入し、証拠品探しを始める。しかし、どうにも設備の調子がおかしくて…?
放送順での前話に打ちのめされた視聴者に向けた(?)スパイとしての日常回。同時に、プリンセスにとっての改革を小さな規模で描いた、という見方が議論されている。毒ガスでの凄惨な死体の描写をベアトのリアクションで表現したり、アンジェがプリンセスを文字通りお姫様抱っこでお持ち帰りしたりと、キャラ描写も色々と抜かりない。
#06「case18 Rouge Morgue」
機密文書を体内に隠したまま死亡した諜報員がモルグの死体安置所に運ばれてくる…。適任としてコントロールより使令を受けたドロシーとベアト。潜入先で父親と再会したドロシーだったが、モルグには、踏み入れた者の半数が生きて帰れないという不吉な噂があり…。
ベアト、ちせに続く、ドロシーと父親との関係を描いたエピソード。アルコール依存からのDV描写が容赦無い。…が、それ以上に、陽気な音楽と合唱をバックに描かれるラストが本当に容赦無く、数多の視聴者の心を抉った。ベアトが居なければ雰囲気が重過ぎる回だが、あのラストの悲壮さもベアト抜きでは成立しない皮肉。
#08「case20 Ripper Dipper」
不穏な動きを見せるオライリー卿の密会相手を探る為、彼を監視する事になったアンジェ達。プリンセスの無茶振りにより、監視任務に加えて彼女の替え玉を務める事になったアンジェは、任務の最中親しくなったスリの少女に、黒蜥蜴星の王女とスリの物語を語り聞かせる。
「case01」から劇中で描写されていた、"チェンジリング作戦以前より、アンジェとシャーロットは入れ替わっていた"という二人の秘密、その真相が明かされる回想編。シナリオのベースはおそらく、アメリカの児童文学『王子と乞食』。本物のアンジェ=現プリンセスの体験した地獄、そして、アンジェとシャーロットの絆は、どちらも、とても言葉では言い表すことが出来ない。
#10「case22 Comfort Comrade」
クリスマスの夜、アンジェ達に海軍卿の居城から機密文書を奪取する指令が下る。城内へと侵入したアンジェ達を出迎えた協力者は、かつてスパイ養成所で同期だった"委員長"。久し振りの再開で話に花を咲かせる彼女達だったが、委員長にはある疑惑があり…?
再び巡ってきた過酷なドロシー回。…であると同時に、苛烈な百合回としての側面も持つように思われる。様々な表情を見せるベアトがあまりにも可愛いが、物語の非情さはそれでカバー出来るレベルを超えており、ラストシーンの衝撃がそれに拍車を掛けた。ちなみに、委員長を演じた大橋彩香さんは、3㎐の前作『フリップフラッパーズ』において、メインキャラ"ヤヤカ"を演じている。幼馴染の少女を気に掛けながらベコニアを育む…と言えば、ピンとくる方はくるのでは?
#11「case23 Humble Double」
コントロールの実権を軍部が握り、不確定要素を排除すべくプリンセスの暗殺命令が下される。自らその任を引き受けたアンジェだが、状況を打破する術を見付ける事が出来ず、監視の目を欺いてプリンセスをカサブランカへと逃がそうとするが…。
前話の引きから続く、プリンセス暗殺命令が実行に移される極限状態の中、冷静を装い周囲の状況を確認していくアンジェ。アンジェとプリンセスのタッグにかかれば、訓練された諜報員が束になってもまるで敵わない、が…組織を相手にするという非情な現実の前に、遂に黒蜥蜴星人が弱みを見せてしまう…。実は、チェンジリング作戦により、11話、12話は脚本家が大河内氏から変わっている。
#12「case24 Fall of the Wall」
あの時交わした、約束の為に…。
以上、12話。