六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

考察『放課後のプレアデス』最終話

今まで断片的に話してきましたが、放送終了から1年という事で総括として。
総括と言っても、あらすじやキャラクターの魅力等については、多分ここでは何も言いません。かと言ってシナリオの根底にある(と、自分が思っている)モノについてはガンガンネタバレしていくので、真っさらな状態で観たい、という方はブラウザバック推奨。ただ、観てないけど観るきっかけになるかもしれない、という方がいらした場合はどちらが良いかは自分には判断の付かない事です。

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まず、『放課後のプレアデス』のラストについて度々自分が「あの不完全さがあって完璧」と言ってきた事について。これはもちろん投げっぱなしで終わったと言っているわけではないのですが、ただ想像の余地が残された、と言っているわけでもないわけです。それこそ、元の世界ですばるが目覚める場所が"自室ではなくみなとの病室"であったとしても想像の余地は残ると思うんですよ。自分は今までに観てきた作品の中で比較的プロットが近いと思っていた"ある作品"同様、すばるは病室で目覚めるのではないかと考えてました。でも、この作品でそう表現してしまう事を想像した時、果たしてここまで心に残って引きずるような結果になっただろうかと思いました。安易に救いとしなかった差は大きいのではないか、と。あのラストは存外に心を抉ってきたんじゃないか、と。

今の時代、それをバッドエンドと捉え、また、そういった感覚を安易に"つまらない"と形容してしまう傾向があるように思えてならないのですが、もっと、そうした処理しがたい感情、感覚に対して向き合う価値はあるんじゃないかなと思うんですよ。再会まで描かれなかったことに対して、悲しいと感じても良いだろうし、いやいや再会するハズだと前向きに捉えても良いだろうし、その上で、じゃあこの先どうなるのだろう、と想像する余地がある事には価値があるハズです。その余韻に浸る暇も無く次から次へと新しい作品が出てきていて、それを一過性の娯楽として受け流していくのも一つの楽しみ方ではあると思いますが、それは非常に惜しい事だと個人的には思います。

話を戻して、佐伯監督がラストシーンのみなとについて、「(あの場面でみなとが目を開けてしまうのは)優しすぎるかな」と仰っていたことについて上げると、みなとの死の運命って根本的に回避されたわけではないと思うんですよ。そもそも、そういう感覚って誰しもが大なり小なり持ち合わせてるモノなわけです。じゃあ、どうしてみなとの描写が変わったのだろうかと考えた時、それはみなとの内面以外にはないように思います。

死の運命が自分の行き着く先だと信じて疑わなかったみなとが、「それでも」と言ってくれたすばるに対して、想い想われるその関係性に対して、ようやくそこに自分の存在価値を見出した。きっと治るよという慰めでもなく、誰か助けてという懇願でもなく、ただ「それでも」って、それ以上に幸福な事なんて自分は想像付かないんですがどうでしょうか?ラストはもう、この"エゴ"の一点に尽きると、自分はそう思います。補足を挙げるなら、普段自分は、「何でもかんでも『エヴァ』を引き合いに出す人は信用ならない」みたいな事を言ってるので、同じ出典の用語を出すのは気が引けますが、リビドーやデストルドーとも呼ばれる人間のエネルギー、つまり、みなとの感情が生と死のどちらに向かっていたのかという点について、それが今度こそ生に傾いたんだと思うんですよ(佐伯監督はBD-BOXのブックレットにおいてこれをタナトスと表現していたため、この読み解き方は演出に対して正確だったと思います)。これは、幼少期に初めてすばると出会った時に、みなとが獲得しようとして零れ落ちてしまったモノであり、それが長い時間を掛けてようやく結実した、これがあのラストシーンだったと思います。

ここまで書いて、じゃあこの人はラストに納得してるんだろうな、と思われるかもしれませんが全くもってそんな事はないんです。もちろん、最初に書いた通り作品の様式としてはこれで完璧だと思ってます。しかしながら自分は、例え木箱が描かれた絵を渡されたとしても、そこに素敵なヒツジが入っているかどうかはやっぱり開けてみないと分からない、と考えてしまうタイプの人間なんです。木箱を受け取った側があれこれと想像し尽くした後に、やっぱり木箱を描いた人たちに、こんな素敵なヒツジが入っていたんだよと、改めて箱を開けて欲しいなと思っていたりするわけです。(※ヒツジの話は『星の王子さま』より)

 

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