筆者のガンスリ観に誤解があるといけないので出来れば先に読んで下さい。
- #1 Easy does it
- #2 The more the merrier
- #3 More haste, less speed
- #4 Nothing seek, nothing find
- #5 So far, so good
- #6 Opposites attract
- #7 Time will tell
- #8 Another day, another dollar
- #9 What’s done is done
- #10 Repay evil with evil
- #11 Diamond cut diamond
- #12 Nature versus nurture
- #13 Recoil of Lycoris
#1 Easy does it
ジャンルとしてはガンアクションとされているけれど、世界観として考えると『攻殻機動隊』のようなカウンターテロ(テロリストが事件を起こす前に暗殺すること)や『PSYCHO-PASS』のようなディストピアが背景にある作品のように思われる。ただし、本作における犯罪の検知がどのように行われているのかは不明。本部のメインコンピュータがクラックされた際にリコリスが情報を隔絶されてしまった点からは、少なくとも電脳化や強固なネットワークに支援されたメンタルチェックのようなシステムに由来するモノではないように思われる。爆弾テロのような事前に察知できそうな犯罪はともかく、ナイフを用いた通り魔的な犯行であっても事前に察知、暗殺されているため、ドローン飛び交う描写等を考慮すると現実よりも監視の目が遥かに厳しい社会なのかもしれない。
DA本部をクラックしたウィザードであるウォールナットを暗殺しようとしたのは依頼人であるアラン機関の構成員(ただし、ウォールナットが彼の名前までを知っているかは不明)。彼こそが武器の密売を行ったバイヤーであるようだが現時点では目的不明。社会の安全と平和は人々の規範や善意によって成り立っている……、という大きな嘘が提示されている以上、おそらくはアラン機関が善意によって人々を支援しているという話にも裏があり嘘であると考えられる。
#2 The more the merrier
ウォールナットのリコリコ加入編。1話もそうだったけど、敵全員を生捕りにするならまだしも顔を見られた上で生かしておいたら後々危険なことにならない?という不安が過ぎる。ウォールナットもといクルミがどこまで自分のことをリコリコの面々に打ち明けているのかは現時点では不明。
もし、敵の暗殺グループが得物に対物ライフルとか持ってきたら、防弾チョッキなんて余裕で貫通して中のミズキが蜂の巣にされていた気がするが、事前の情報戦で敵の戦力が割れていたからこの作戦になったと考えるのが妥当か。
#3 More haste, less speed
制服の色で階級が1stから3rdに分けられ、DAへの貢献度(多分)で専用寮に住めるというような設定があるように見えるが、組織に飼われる暗殺者を服従させるのに足るのだろうか?ガンスリでは公社内部の状況をリークしようとした人物が“偶然にも不慮の事故に遭って死亡する”といった出来事が描かれたが、あるいはそうした事故によって守られている組織なのかもしれない。主人公2人(と、1話で人質になってた子)以外の名有りのリコリスが色んな意味で露骨に可愛くないなと思ったが、暗殺部隊が真っ直ぐな性格で可愛げのある少女のまま育ってる方が実際には異質と言える(ガンスリは容姿は整形、性格は洗脳による産物というとんでもない設定がある)。そういう意味で不殺で好き放題している千束が司令に高く評価されているのが一番異質。敵を生捕り出来るのは人材としては間違いなく貴重だけど。
今更だけど「百合尊い」みたいなことは他に幾らでも言ってる人がいると思うのでここではあまり触れないかもしれない。
#4 Nothing seek, nothing find
百合作品は水族館に行きがちという話を最近聞いたので、御多分に洩れず王道の水族館デート回だなと思うなど(ちなみに手持ちだと『魚の見る夢』『熱帯魚は雪に焦がれる』『新米姉妹のふたりごはん』『やがて君になる』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』等が該当した)。たきなの「さかなー!」のインパクトに埋もれているが、千束の「他人の時間を奪うのは気分が良くない」「それが悪人なら余計に」という旨の告白を鑑みるに、それは、そうした気分になった経験が実際にあることの裏付けでもあると思われるので、例えば非殺傷弾を使う前、最後に手に掛けた相手は一体誰なのだろうみたいな想像がある。
また、アラン機関が千束に投資した理由は吉松シンジ曰く「類い稀なる殺しの才能」とのことだが、彼がリコリコに足を運ぶ一方でテロリストに武器の密売を行なっている理由は、現在の千束を投資に反する状態と認識して殺人機械に戻そうとしている?
#5 So far, so good
依頼人の替え玉回。そんな大胆な設定はウォールナットにバレそうなものだが、彼女のことも騙したとしたならば、多額の依頼料やミカの旧友を千束に殺害させようとしたこと等を併せて考えると、素直に考えればシナリオを書いているのはアラン機関ということになる。千束が人工心臓をアラン機関に貰ったのは断片的な情報から鑑みるに、4話でミカとシンジの会話にあった10年前に一度会ったきりのその時。DAの集める孤児というのは虐待等で親元から回収された子供なのか、あるいは赤ちゃんポストのようなシステムから連れて来て一から育てているのかは今のところ不明なので、千束が人工心臓を貰ったのがリコリスになる前後どちらかなのかも不明。ただ、そんな短期間で暗殺エリートを育成出来るとも思えないので、電波塔の事件で目をかけられ/心臓を欠損し移植されたと考えるのが妥当か。
#6 Opposites attract
セーフハウス(草薙少佐が女友達とちょっと書けないような行為に耽るのに使ったり、ランジェリーケースの下に武器弾薬を隠したりしてるアレ)の役割がイメージと乖離していて、千束の場合は顔や所在を犯罪者達に知られている(生捕りにしたり殺さずに痛め付けるだけで逃したりしてるから当然だが)のを自覚した上で、連中を敢えて誘い込んだ上で更に痛め付けて追い返すという妙な使い方がされている。リコリスの成り立ちといい、どちらかというとセーフハウスより忍者屋敷のそれに近い。「リコリスの制服がバレてるんじゃないか?」の件がこのセーフハウスの設定と併せて考えた時に(え?バレてんじゃないの?)と、どうにも飲み込めなかったのだけど、どうやら劇中のチンピラや男の子版リコリス(男の娘じゃないよね?)の襲撃者達は千束のことを裏社会の何でも屋のヤベー奴という認識はしていても、彼女の不殺という特性とリコリスの暗殺部隊という特性の乖離等から“千束=リコリス”という認識に至っていないのだなと思い当たる。実際、1話でもウォールナットが「暗殺者の正体が少女とは」と驚く場面があった。それが今回、シンジの策略とロボ太の命乞いによってまーじまさーんが彼女に興味を持ってしまったことで、少なくともリコリス襲撃犯グループの間ではこれが共通認識になってしまった。規模こそ違えどサイレント・ジンを嗾しかけたのと同じ戦略と言える。シンジはテロリスト集団を千束に殺させたいのではないだろうか。あと、気になるのはクルミが銃取引のバイヤーがアラン機関であるという情報を未だにリコリコの面々との間で共有している描写が無い点。
DAの評価は暗殺されている3rdリコリスが情報漏洩したメンバーだとわかって囮にしていたのか、それとも狙われてるのが誰かわからなかったので取り敢えず3rdに単独任務を振りまくったのかでその無能さの程度の評価が大いに変わる案件かなと思う(劇中でもミカが苦言を呈しているので、何にせよこれは演出の失敗とかではなくそういう愚かな行為として描かれていると認識して間違いない)。あと、千束の目が弱点という設定は“チタン骨格に覆われた義体であっても眼球を通してなら脳を撃ち抜き射殺出来る“というガンスリの最重要設定のオマージュ?
#7 Time will tell
電波塔テロを止めたのは千束、加えて、一方で首謀者が真島さんであると開示される。武器供与してる以上は今更だが、まーじまさーんは謂わばアランテロリスト。アランリコリスといい酷いマッチポンプだ。ただ、シンジが執着しているのは千束の方なので、どうにも捨て駒感が否めない。才能は神に与えられたモノと言いつつも本人の意志は全く尊重していないので、どうにも独善的で恩着せがましいというか「神様はきっとこう思ってるから僕はそれを遂行しないといけない」みたいな思考してる気がする。たきなからの好感度も下がったっぽいし、千束も殺しの才能には絶対乗り気では無いのでペンダントも外してしまった。シンジは最期、まーじまさーんに撃たれるんじゃないかしら?
上記の通り心臓は電波塔テロのことがきっかけで移植されたと考えていたが、まーじまさーん曰く全く敵わなかったとのことなので違うか?ただ、実際に折られてはいるので試合に勝って勝負に負けた的な話でその時にという線は残るか。
バーのエレベーター内でのミカとシンジの会話から、ミカはシンジがジンを嗾しかけたことをどうやら理解しているっぽい?リコリコの面々はこの二人が愛人関係にあると思ってるっぽいが実際のところは未だ不明。シンジは千束に殺しの才能のために心臓を与えたことをミカにそのまま伝えており、これは今後も隠して暗躍するものと思っていたが、どうやら本人にもたきなにも伏せるつもりは無いらしい。クルミの様子からは、少なくとも銃取引のバイヤーがアラン機関の誰かであることはわかっていても、自宅を爆破した相手がそうであることを含めそれがシンジであるとまではわかっていないようだ。あと、犯罪の検知どうやってんの?って思ってたけど、割とマジで無数の監視カメラによる目視(実際はラジアータが選別してオペレータが最終確認してるんだろうけど)でやってるっぽいので、千束とたきなの関係性ではなくカウンターテロやディストピアSFに注目すると粗が見えて、視聴姿勢として正しく無い気がしてきた。
#8 Another day, another dollar
喫茶リコリコって隠れ蓑みたいなもので赤字上等経営なのかと思ったら実はヤバいという。7話の千束とたきなの絵のセンスがそのままパフェの出来に反映されてる(義体の動作訓練も兼ねて座学で絵画や音楽等の教養も学ぶガンスリとはこの辺も大分違う)。果たしてアレをパフェと言って良いのか……?店の経営よりもヤバい仕事での報酬の方が大きかったような気がしないでもないが。レコードに惚れ惚れしてるミカの背景に浮かんでる薔薇の花が気になって仕方ないが、それを突っ込むとクルミのように沈められてしまう。話は前後するけど、まーじまさーんがアランテロリストだという話題でもDAをクルミにクラッキングさせたのがアランの構成員だという点に触れないとは思わなかった。脚本の人、この設定忘れてない?
6話で触れた通り、やっぱセーフハウスの使い方間違ってるからこういうことになるよねー、というのはある意味で筋が通ってるのでこっちは触れられて良かった。良かった……?千束とまーじまさーんはやはり似た物同士というか、目が強みであり弱点に対しての超聴力という設定はやはりガンスリ由来なんだろうか?(目については6話で触れた通り、ガンスリの主人公ヘンリエッタには聴力が義体の中で最も優れているという設定がある)6話でまーじまさーんがセーフハウスでチンピラを追い回す千束に興味を持った理由を計りかねていたけれど、あれは“千束を見た”からではなく“非殺傷弾の銃声を聴いた”からっぽい。趣味の合う友人ムーブかましてきたまーじまさーんに対し、たきながメンドクサイ彼女ムーブを取りバランスが取れている。
DAのセキュリティのガバさが色んな意味で目立つの気になるんだけど、そもそもここのスタッフが上りを迎えた上で生き残ったリコリスなのか、それともミカのように引き抜き主体で構成されてるのかが不明なので、今回のような敵勢力の侵入者を許すという事態がどれだけ想定されてるのかがイマイチ掴めない。少なくともロボ太にDA本部の場所を知らないと言っていたのは嘘で確定。嘘吐きばっかりだ。千束を殺すつもりなら睡眠薬ではなく筋弛緩剤(足立監督だし)でも注射してしまえばいいので、ラストのは殺害とはまた違った意図に思える。ガンスリ風に言えば洗脳して殺人機械に変えてしまうことのような。でも、リコリコは脳は弄ってないっぽいからなぁ……。
#9 What’s done is done
即死させない以上は殺害とは違った意図があると前回記したが、半分当たり半分外れ。クルミの言った通り、殺すつもりなら心臓を破壊してるしなんなら銃で頭ぶち抜けば済むのだから、わざわざ余命2ヶ月なんてリミットを付けた以上は相応の理由があると考えるのが妥当だけど、どうにも千束やミカへの嫌がらせのためにそうしているという可能性も排除出来ない。使命使命言いながら結局は自分の思い通りにならない玩具を壊そうとする子供のそれにしか見えない。しかも自分のルール違反がきっかけだし。まーじまさーん、殺っちゃって下さいよ。そうでないと百合の間に入ってあまつさえ死で2人を引き裂こうだなんて悪行に対するバランスが取れない。……ここがシンジの計算違いかな?シンジとしてはミカに嫌がらせしてるつもりなのかもしれないが、実際に逆鱗に触れたのはたきなだから。まーじまさーんはもう味方ルートに完全に入ったと思う。俺と釣り合い映画語りが出来る奴がいないとバランスが取れない。……こいつも百合の間に入ってるぞやっぱ生かしちゃおけねぇ。
千束ついて整理すると、殺しの才能は元から、心臓は先天性の心疾患、移植は10年前で電波塔事件の前、不殺になったのはおそらく心臓移植の際の救世主という言葉に感銘を受けた後(術前に既に1stリコリスだったので現場仕事してなかったとは考え難い)、移植後も元々成人までしか生きられなかったがミカはリコリス現役年齢が18であることからこれを了承した。こんなところか。あと、人工心臓は当時のオーバーテクノロジーで数世代先の技術(ただし耐久性に難あり)らしいので、真っ当に考えれば10年経った今ならその先もあるでしょう。あると思いたい。だって“義体は短命であることが運命”だとガンスリそのままになってしまうから。
1話からぐちぐち言ってたクルミ襲撃犯がアラン機関であるという情報にようやく触れられる。それ、最初から言っておけばシンジを、アラン機関を敵として認識する理由になって今回の事態が違う方向になったと思うので、この点は脚本を詰めきれてないミスのように思われる。DAのセキュリティがザルである点も含めて細かいところもっと詰めてたら引っ掛からないのになー、って。勿体無い。そういうの観るアニメでは無いのだろうと上記したけど。あと、ミカが教官になったのは足を負傷して障害を負った後(千束の父親を引き受けたのは更にその後)だと今回開示されたので、ガンスリ的には#3に書いたような死亡フラグが立った。千束はたきなに積極的にアプローチして惚れさせておいて「余命2ヶ月。それに元々成人までしか生きられなかったの」なんて達観モード。映画とお菓子を山積みにして毎日観てたのも時間が無いことを知っていたから。たきなからしたら酷ぇじゃねぇかとしか言いようがないので、たきなは千束に「私のために生きて!!」「1人にしないで…!!」ってリコ的な感情をぶつけ繋ぎ止めるしかないでしょうもう。
#10 Repay evil with evil
アバンからAパートにかけて、千束の言動の全てが死ぬ為の準備してるとしか思えない(実際そう)展開で、成人式のために用意してあった晴れ着を先に出されてしまったことがそれに拍車をかける。先生も諦めてんじゃないよ!!一方のたきなは千束の為に戦場に赴いて、それはリコリコに「ただいま」と帰って来た時に千束が「いらっしゃいませ」と言い掛けた後に「お帰り」って言ってもらう為にやってることなんだぞ、何でこんなすれ違ってるんだとまずは言いたい。リコリコ閉店じゃないんだよここはもうたきなの居場所でもあるんだぞ!!狂犬たきなが帰ってくるお家と千束の為に頑張ってるんだぞ!!そのお家失くしちゃ駄目だろう。ミズキとクルミがフェードアウトってことはまあ無いので、電波ジャックのニュース聞いてUターンしてくるでしょう。ロボ太とDAとの板挟みも方法はどうあれ、ウォールナットが介入すればそれで解決する。
先生はリコリスの教官とかそういうレベルではなく先代のDA司令。人間味溢れる悔恨の叫びが良かったな……、ラストの髪縛ってエージェントの面構えしてるところも……、なんてことを思う一方で現状のDAというか楠木司令の無能さが際立つ。電波塔ジャックしてやることを真島さんに言われるままに爆破と決め付けてスルーしてるの何なん?電波塔ジャックしてやることの最優先事項は電波のジャックでしょうよ。敵でも味方でもそうなんだけど、どっちかが無能だとそれだけで強敵感が薄れるのでこういうのは両方が有能でいて欲しい。バランスが悪い。真島さんの演説の最中はずっと、『スカイ・クロラ』で描かれた「人々が平和を平和として実感出来るよう、ショーとしての戦争と死を常に魅せ続けなければならない」という世界観が脳裏にチラついて離れなかった。平和ボケした日本というのは現実のそれとリンクする。話を戻して、でも、会員バーのセキュリティ突破する時にクルミが「情報ばっか見てると何も考えられない馬鹿になる」旨のことを言ってたから、これがそのまま現状のDAを皮肉ってるような気もする。地に足付けて街に根付いて揉め事、困り事を解決しまくってきた千束と、監視カメラとネット越しにしか世界を見ていないDAとを対比してるような。千束がやってきたことは、ウォールナット襲撃犯を改心させたような不殺のカウンターテロ活動なんだなと今になって思い至った。救世主なんて言うから宗教色がチラついて該当する言葉に行き着かなかった。ようするに千束はご当地ヒーローとして治安維持に貢献するリコリスなんだなって。
#11 Diamond cut diamond
まーじまさんがリコリスの発砲、殺害シーンを生中継&街中でのデモンストレーションによってDAの存在を世間に明るみにする、新電波等を丸々ブラフに使い本命は旧電波塔を使用する、デモンストレーションで用済みになったリコリスを対人地雷で一掃する、等々の有能というかまあそうするよね?って戦略であっさりとDAを落とす一方で、楠木司令はというと名簿を更新し忘れて作戦に支障をきたし、真島さんの作戦全てに嵌り、ラジアータをF5アタックで攻略されてまたもや指揮が取れないと無能と醜態の極みを晒し株価の下落が止まらない。寧ろ司令なんかいない方が作戦が上手くいく空気すら漂っている。同じ規格の制服使い続けてたらそりゃあこうなるよね……。今回のデモンストレーションのために千束とたきなの制服姿を把握された上で泳がされてたわけで、そういうの全部「大丈夫、ラジアータが全部もみ消してくれます」とかタカを括って個別の対処なんか何も考えて無さそう。やっぱガンスリみたいに作戦や状況に応じて変装、化粧をして擬態しないとダメだって。それに攻殻のどっかのメスゴリラも、同じ規格で部隊揃えたら一つの攻撃手段がハマると全滅するからダメって言ってたじゃん。ただこれ、10話の考察にも書いた通り、やっぱ7話でクルミが蒲焼太郎に騙されたバーの受付を「データばっか見てたら馬鹿になる」みたいに揶揄してたのは、ラジアータに頼りっきりのDAと楠木司令の無能さをそのまま暗喩してたと考えて間違え無さそうなのがね……。楠木司令は犠牲になったのだ……。千束とたきなの百合タッグと真島さんの最終決戦のみに話を絞る為の脚本の犠牲にな……。とは言えバランスバランスうるさい真島さん、千束の目を封じた上で自分は耳の能力使い放題の有利なフィールドで戦ってるの、バランス悪くないっすか?
クルミは欧州に高飛びして遊び行くよみたいなこと言ってた癖に千束を助けることしか考えてなくて健気可愛いし、ミズキはなんだかんだでぶつくさ言いつつそれに付き合ってて腐れ縁感が良い。街中の監視カメラ総括することと通信端末の中継くらいにしか役立ってないラジアータとかいう自称スパコンと違い、おそらくクルミが単独で組んだと思われる端末とOSの優秀さ多機能さが比較にならないレベルで可哀想……。娘を信じて送り出した先生は、まさかあのライフルを一発も撃たないなんてことは無いと思いたいね。こういうアニメのオッさんはカッコ良くないとダメだと相場が決まってるんだから。
一方の吉松シンジは新しい心臓を用意しながら娘を襲わせるという毒親ムーブをかましてた訳だけど、それに加えて多分これはまーじまさんと取引して囮役買って出てますよね。さっさとたきなに引っ叩かれて改心しろや。百合の間を引き裂くとか本来なら極刑相当の罪だ。
ラジアータたんを盲信してるDA本部とは違い、もはや千束のことしか考えてないたきなは、真島が狙ってるのは千束なのだから事件解決にはそっちの線を追うべきだという至極真っ当な推理で本部の命令をガン無視。束縛コールの約束が突入の合図に使われてて、やはりこれは百合主体の作品だなと改めて思ったりした。でもこれ、真島さんの狙いは千束だって言ってるのに千束なんか知らんとあんぽんたんな返答してる司令が100%悪い。こんな無能なDA本部なんか必要無くて、あちこちに喫茶リコリコをオープンして各々が千束のようにその街の平和を守るご当地ヒーローやった方が良くないですか?あと、今回の件で喫茶リコリコの常連さんたちはその見慣れた制服から千束とたきなが暗殺部隊リコリスだって知った訳だけど、その上で5話で張られた伏線から例えDAがどうなろうと、新装開店したリコリコで必ず彼女たちを迎えてくれる大人たちがいるという安心感はある。保育園はどうだろうなぁ……。お姉ちゃんたちに懐いてる園児は味方してくれそうだけど。
#12 Nature versus nurture
吉松シンジが毒親として狂い過ぎてて全く共感出来ないので、これを殺そうと牙を剥いて「心臓が逃げる!!」とまで言い放った狂犬たきな方に感情移入してしまうという妙なバランス。たきなのこの辺の台詞をギャグ的に捉えてる人が割といるけど自分は全く笑えなかった。切実極まりないから。吉松は毒親っていうか子供の進路勝手に決めてお受験に縛り付ける教育ママ的な?神様神様って押し付けてそう勝手に決めてるのは自分じゃん。アランはカルト宗教か何かか。人工心臓はマジで移植されてるのか、それとも見掛けのフェイクでケースの中には人工心臓があるのか。ケース回収されてる気配が無いから前者か?でも、千束の胸にあんなわざとらしい手術痕無いし、人工心臓だけ最新式のオーバーテクノロジーで開胸手術だけローテクってのも妙だ。(※追記)ケースは吉松ではなくおばさんの方が持って逃げたから中身あるわ。だから手術痕はフェイクで心臓はあの中(追記終わり)。でも、クルミは人工心臓の製作者特定しているのだからこの際もう吉松がどうなろうと関係無くない?やっぱ百合を引き裂こうとした罪で真島さんに撃たれるべきだと思う。このまま報いが無いのはバランスが悪い(吉松の親目線では全く感情移入出来ない。ミカは父親してると思うけど)。
ロボ太の件は引っ張った割にはアッサリだったなぁ……、というかあの一連の流れはギャグとしてやってるのか結果としてシリアスな笑いになったのか判断が付かない。「ラジアータが復旧しましたが乗っ取られています!!」っておい。街中で何人か撃ち合ったのはどうやって揉み消したのだろうか?でも、フェイク映像で有象無象の大衆は誤魔化せても、リコリコの常連さん達は気付いたと思うんだよね。最終話はその辺の掘り下げあるんだろうか?
髭面の爺さんは政府高官ではなくカメオ出演したリリベルの司令だった。ウォールナットが中継カメラ止めてなかったらリリベルの存在も露見してたぞ。どっちの司令も無能だ。リコリス掃討作戦がこんな雑な幕引きされるんだったらやっぱDAの設定は設定だけ用意しておいて描写丸ごと要らなかったんじゃないかなぁ……。DAサイドはフキとサクラと人質ちゃんだけいれば話回っただろうし。終盤でサクラが急に口悪いだけで理解あるヤツになっちゃったので、楠木司令の無能パート全部オミットすればこっちの掘り下げ出来たと思う。あと、「リリベルがランドセルで偽装したショタじゃない!!」って嘆いてる人割といるけど、千束のセーフハウスや喫茶リコリコを襲撃してたのがあの1stリリベルならショタ時代から因縁があるハズなので、今回描写されてないだけでランドセルで偽装してリコーダーの仕込み刀装備してるショタのリリベルはいるでしょ。千束同様7歳で1stみたいなケースが稀で数が滅茶苦茶少ないだけで。ただ、その辺掘り下げると百合の主題から外れるので、たきなに「千束の寝込みを襲っていいのは私だけです」みたいなスパイスに使われる程度に留めて欲しい。
アバンで飛天御剣流“龍鳴閃”を両耳に食らってノックダウンされた真島さんがラストに再登場。楠木司令の寄越したクリーナーがやらかしたのか、それともシンジが逃したのか。後者じゃないとドラマが無いかな。電波塔はウォールナットの支配下にあるので千束と争ってこれ以上何するんだろうと思わんでもないが、あるいはシンジが仕向けたという読みが正しいのであれば、千束に真島を殺させる為に使われているという線は残る。けど、真島さんって人にそうやって使われるのを良しとする人じゃないのはロボ太のリコリス狩りの件からわかってるので腑に落ちない。たきなの「千束が死ぬのは嫌だ」というのも千束が生を諦めてるのも利己的な感情としてまだ全然足りない感じがするので、メタ的に言えばそれを奮い立たせる役割を与えられている気がする。
#13 Recoil of Lycoris
とりあえず人工心臓がフェイクだったのかどうかから。前回の考察が二転三転した末に「多分フェイクだけど吉松シンジの生死なんてこの際もうどうでも良くね?」みたいな結論になったけど、ミカが吉松は嘘吐いてないと断言してしまった以上、視聴者の想像に委ねる形ではあるけど十中八九ミカは吉松を殺して人工心臓を抜き取ってる(ただ、それだと千束の心臓を充電不可能にしたおばさんをあの場で殺さなかった理由がよくわからない)。で、ミカは何食わぬ顔で「シンジから心臓を奪取した。あいつは自分に人工心臓を移植したと嘘を吐いていたんだ」と、たきなには説明してケースを持ってクルミが手配した病院へ。クルミはミカの足が実は不自由ではないことを知ったので、その前後の事の顛末を全て知っている。そして、千束が描いた絵をミズキが他の絵の額縁で覆っていたことからミズキもおそらく事情を知っている。知らないのは千束とたきなの2人だけ。クルミが年少組ではなく大人組に区分けされてるのも多分このため。千束の信念に反する以上、ミカはこの嘘は吐き通さないといけない。千束は7話のバーでの会話や10話の晴れ着の時のミカの吐露から、もう自分にはミカは隠し事をしていないと思っている。だからクルミは「お前が一番怖いからな」と言った。多分そういうこと。常連の刑事さん達も事件の真相に気付きつつもそれは胸に仕舞った訳で、この辺の大人の対応は一貫してる。餓鬼なのは終始駄々こねてた吉松シンジだけ(こいつシンジ嫌い過ぎだろ)。
ただまあ、自分は吉松絡みでは全く感情移入していないので、親同士の教育方針のすれ違いで犠牲になりかけた娘の行く末に父親がケジメを付ける形になったか、と、ドライな感想を持ってしまった。リコリス掃討作戦みたいな要素を雑にガンスリから拾った(?)一方で、たきなとの百合路線で「私のために生きて!!」エンドにはならなかったなー、って(初期の頃に百合的なことはあまり言わないかもしれないとか自分で言っておいて横暴な意見だ)。喫茶リコリコ周りのご当地ヒーロー日常系とDA周りのシリアスのバランスもそうだけど、それらの人間関係含め色々やろうとしてちょっとどっち付かずな感じになっちゃったなぁ、と。
そういう意味では真島さんって日常パートに映画談義とかで溶け込みつつもシリアスパートでラスボスやったんだから不思議なバランスのキャラだ。顔面は砕かれてるっぽいけど生き残って次のテロを起こそうとしてる引きなのは、キャラを立てる為……、というか歪な平和を象徴する存在としての位置付けなのか、メタ的には2期の線を残す為なのか。ただ、ジュース回し飲みに応じた罪は極刑に値するので次あれば裁かれて?
Cパートはちさたきが保護者同伴でハワイに新婚旅行に訪れている先でも出張リコリコの何でも屋をやっている、みたいな感じ……、なのは良いのだけど締まらない雰囲気というか「まだ続くけど何か?」とでも言いたげな終わりっぽくない〆方だったなと。
リコリス・リコイル Ordinary days (電撃文庫)
↓コミック版連載開始ですが、何気にKindle Unlimited対象です。
ガンスリっぽいの。