六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

コロナ禍の今こそ観るべき、そして二度と観たくない名作『DEVILMAN crybaby』感想

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ネタバレはそれなりに記述しますが、多分、この作品は文章で説明されてもあまりピンと来ないと思います。本作の残虐性の肝はあくまで人間の精神的、心理的な負の側面であり、描かれた残虐描写の数々はそれを補完する意味合いが強いと思いますが、とりあえず規制無しに首や四肢が普通に飛ぶ様な作品なのでそういうのに耐性が無い人にはお勧めしません。

 

 

 

 


・役者「村瀬歩」の魅力を余すところ無く堪能出来る

では、まずは柔らかい話題から。

皆さんの村瀬歩さんの役柄のイメージってなんでしょうか?性別不詳の中性さ?エキセントリックな美少年?男性なのに女性役?倫理観の狂った気違い?英語に堪能なバイリンガル?色々あると思いますが、なんと本作には少なくとも上記全てが詰まってます。あの役はこの方しか演じられないと言っても過言では無いでしょう。この要素の為だけに視聴する価値があります。しかしお勧めしません。


・展開の理不尽極まりなさ

さて、本作は主人公の家族だろうがヒロインの友人だろうがお構い無しに名有りのキャラでもバンバン殺されていきます。伏線とか何もあったもんじゃないです。超展開だとか説明不足とか、本作の展開はそんなちゃちなモノじゃないです。現実には都合良く伏線なんてモノは無く、全てが理不尽に終わってしまう可能性を突き付けてくれます。誰かを信じる心だとか他人を思い遣る愛だとか、それらは確かに尊い感情なのかもしれませんが、それとは全く関係無く親しい人達は理不尽に殺されていきます。主人公とかヒロインとか、私達は作品を鑑賞する際にそういった役割に準じた活躍を期待するのではないかなと思います。しかし私は本作の最終回の“本作に関わった全ての人達の名前がごちゃ混ぜにされた、役柄や役職の併記されていないクレジット”を観て、それらがただの思い込みによる願望に過ぎなかったのではないかと思いました。主人公とかヒロインとか、そういったポジションが確かに存在しているというのは自分の勝手な決め付けなのではないのか、と。


・昨今の負けヒロイン論争がどうでも良くなる

気持ちを通じ合わせたデビルマンと美樹ですが、ヒロインのピンチに颯爽と駆け付けたデビルマンの活躍によって悪は打ち倒され、二人はめでたく結ばれて幸せに暮らし…たりしません。美樹は本作終盤の9話で悪魔ではなく暴徒と化した人間によって虐殺され、五体をバラバラにされた挙げ句に狂喜乱舞する人間達によって晒し首にされます。これで引いた人は観ない方が良いです。そのビジュアルもそうですが、展開のあまりの救いの無さと胸糞悪さに吐くと思います。あと、晒し首と書きましたが、それは私にあの場面を形容するだけの語彙力が無いのでそう書いただけで、実際にはもっとおぞましい形容し難い何かです。

ちなみにこの9話は「ちょっとだけ手伝いました」と本作参加について呟いていたアニメーターの小島崇史さんの演出、作監、一人原画回です。”ちょっと“とは…。


・現実との親和性

今更ですが私は原作未読です(実家を漁ればどこかにあるハズですが)。しかし、本作は舞台を現代に移し設定を今風に変更しながらも、基本的なストーリーは変更されていないと聞きます。つまり、本作は約半世紀前に描かれたストーリーだという事です。

にも関わらず本作は、悪魔に乗っ取られたマスコミが自称専門家によるデマを流して私刑を煽り、人々が自警団を気取り悪魔と見做した相手に私刑を加え、悪魔対人間ではなく人間同士の争いが展開される等、最近現実のどこかで見聞きしたようなストーリーが展開されます。視聴当初は(幾ら何でも人間が暴力的で残虐に描かれ過ぎじゃないか…?)と引いていましたが、全然そんな事は無かったですね。現実で起きている事はそうした理想よりも遥かにこうしたフィクションに近く、人間なんて所詮こんなもんだという事実を嫌というほど突き付けてくれます。これは、原作が昨今のコロナ禍を予言していたとかそういう事ではなく、人間の持つ暴力や残虐さ、自分で思考せずに他者の言う事に従ってしまう脆弱さといった幾つかの本質的な側面を描いていたからだろうと思います。おそらく、本作のストーリーは今から50年経った世の中でも通用する事でしょう。


そして、また世の中が大きく混乱した時に再び本作を観返すと、きっと新たな発見が得られるに違いないという確信があります。しかし、そんな機会は二度と来ては欲しくないです。


DEVILMAN crybaby

間違い無く今観るべき、そして二度と観たくない名作です。


以上