六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

『ワンダーエッグ・プライオリティ』 覚書 各話感想と考察

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卵を割って、セカイを変えろ。

TVアニメ「ワンダーエッグ・プライオリティ」公式サイト

第1回「子供の領分」視聴

原案・脚本の野島氏のインタビュー

今期はこれだけ観届けられたら自分はもうそれで良いと思えた作品です。感想と考察と大それた事言ってますが、直感的に感じた事、考えた事を各話ざっくり書いていきます。あらすじを追うような事もしません。

扱ってるテーマとか百合の湿度とか、そういう面で他作品とは似ても似付かないなという心証です。

 

各話ジャンプ


第1回「子供の領分

アカも裏アカもエッグから生まれた子を助けた対価が「小糸ちゃんが生き返る」とは明言していない。だから、主人公が最期に得るモノは親友を生き返らせる魔法ではなく、あの時あの場所で二人で心中する権利なんじゃないかと思った。あるいは「外に出られるのは一人だけ」の説明が正しいのであれば、仮にあの世界で小糸ちゃんが元に戻れたとして“出られるのはアイと小糸ちゃんのどちら”なのか?

投身自殺した小糸ちゃんの眼と心臓は潰れていたのか?みたいな事を考えてる。あと、ガチャから友達が出て来るという設定のエグさと、小糸ちゃんが生き返るかもしれないとわかった途端に、さっきまで仲良かった相手を「もっと助けたら生き返るんだね!?」って小糸ちゃんを助ける手段として看做している危うさ、残酷さがある。まさに、引いたガチャを数揃えて石とかに変えて、有象無象の友達を消費し尽くした果てにSSRの親友を引きに行くって比喩なのかなと。


第2回「友達の条件」

1話では不明瞭だったゲームのルール(クリア条件)が開示される。ステージは今のところ学校のみで配置されているオブジェクトも多分同じ。ボスキャラはエッグの中から生まれる子供(これは少女限定なのか)のトラウマが怪物となったモノで、多分、中身がそのトラウマに立ち向かわなければ怪物を倒すための武器は手に入らない。ようするに、アイは否が応でもエッグの中身に感情移入し、彼女達を奮い立たせトラウマに立ち向かう手助け?応援?をしなければならないわけだが、その末に彼女達は手を握ったまま消えてしまう。

1話ではアイと小糸ちゃんの百合の距離感、その湿度に殴られたが、2話では、一見すると温厚そうな担任の男性教師が、実は裏で大人しそうな女子生徒(親友の小糸ちゃん)に性的な意味で手出してる90年代ドラマっぽい展開…という疑惑が生じたような感がって気が気ではない。冷静に考えて、本作がアイと小糸ちゃんの百合を主軸にしている等という公式のアナウンスなど無い。

 

第3回「裸のナイフ」

メインキャラ各々のストーリーが個別に進行してくタイプなのかと思っていたが、混信する事で他人のステージ(心象風景?)にも行けると判明。最低でも4ステージあると判って視聴する立場としては嬉しいが、反面、制作陣の大変さがこのクオリティで4倍に跳ね上がる事が確定。作画陣に、自分が今までに毎年これだと思って追って来たアニメに参加してた方々の名前が並んでいて、やっぱそうだよなって気持ちが増す。

キャラクターの説明とか各々の背景とかは、ブス、デブ、ヒッキー、万引き、枕営業パパ活リストカットと古典から割と新しい言葉まで色々と記号化されてる面もあるんだけど、こちらとしては“どうでもいいと思ってる相手のために命張るわけ無いじゃん”っていう信用があるから逆に雑音として落とせる側面もある。要するにそれらの言葉は主題では無いし、キャラクターを構成する主要因じゃない。

第1回の時に感想で言及したが、アイから「小糸ちゃんに一緒に死んでと言われたらそうした」と明言された。

また、アバンの花畑が葬送花だとしたら、「アンタには似合わない」とはつまり“私が死ぬべきだった”という意味になる…。

 

第4回「カラフル・ガールズ」

4人目の主人公は沢木桃恵、沢木先生の親類かは次回以降に持ち越し。アイのお母さんがファッション雑誌の編集をしていたと判明したが、イケメンの先生(美術部顧問)となにやら親密な関係にある様な匂わせ方をされてる点から、顧問のモデル時代(あるかはわからないが)から接点があった、みたいな可能性もある?

桃恵は長身ボクっ娘で物腰も柔らかい王子様タイプ…のように見えるが内面はアイの言う通り「泣いている女の子」なのだろうし、そうとは周囲に見られない事に傷付いている。精神世界は電車の車両、線路、駅周りで、おそらくは彼女を前述の様なイメージで見て告白してきた女の子…実際には親友関係の片方のベクトルが恋愛に転じて破綻したのかもしれない…彼女が振られた後に飛び込んだ情景が舞台になっている。そして、助けた女の子達も桃恵に恋をして(吊り橋効果っぽいが)、同じ様に接して傷を抉って来るのがエグい。桃恵は優しい言葉を掛けながらも彼女達に目線を合わそうとはしない。

小糸ちゃんは飛び降りなので屋上、桃恵の相手はおそらく轢死なので駅のホームに像が置かれているが、リカの相手は花畑の中。花については3話で触れたが死因は不明。ただ、棺桶の中の遺体が痩せ細っていた、つまり外観が一応無事という点から、拒食症からのオーバードーズ等が考えられる。

※追記

花畑はやはり献花でしたね…。

 

第5回「笛を吹く少女」

ねいるの武器はコンパス、舞台は大きな橋で海外かもしれない。コンパスのペンの部分がサブマシンガンやスナイパーライフルに、針の部分が刺突武器になる。コンセプトとしては銃剣のそれに近いか。ねいるの妹は彼女の背中を刺し(傷口を見るに刺したというより何度も抉るように裂いたような)、そして橋から飛び降りて自殺した。彼女はその傷が疼くからエッグを買って戦いに赴くのだという。

タイトルの笛を吹いたのはねいる。リカの「悪役買ってんだ!!」は自分のファンに万引きを辞めさせようと突き放した時と言動が変わっていない訳だけど、彼女の不器用極まりない優しさ…自分の保身の為に言ってるわけじゃなくて、新しく出来た友達の為にそう言ってるんだというのが3-4話の流れからよくわかる。リカは自己犠牲的なきらいがある気がする。

桃恵は沢木先生の姪…おじ様って歳かあの人はという疑問もあるし、パパが出て行ったアイの家に週一で美術顧問が訪ねて来ているというのも通常対応とは思えない。展覧会に出そうとしていた絵はどうなったのか、小糸ちゃんがアイに「(モデルを)辞退したら」と促していたのは、果たしてアイの為なのか、それとも自分の為なのか。

 

第6回「パンチドランク・デー」

2話の時に書いたけどやはりこれは百合アニメの類じゃない。先生が善人か悪人か不明だが、少なくともアイの家族への距離感が不登校生徒の家を訪ねるそれではなかったし、今回もその延長なので“ママとお付き合い”という展開は予想の範疇である。…が、その一方、親友が自殺して鬱ぎ込んでる娘/教え子を前にしてその選択をするか?という強い不信感がある。共通の課題に対するウチに…という流れであれば尚更そういう“勘違い”に対して客観的であるべきってのはこの手の職の倫理として遵守すべき共通事項だし、勘違いでないなら尚更タチが悪い。

オッドアイをとても魅力的と伝えるのはそれ自体は不自然でも不適切でもないと思うけど、桃恵が言っていた“おじ様は保護猫を家でたくさん飼っている”が後から情報として出て来た事で裏があるのではと勘繰ってしまう。オッドアイは特に猫に顕著な身体的特徴なので、アイの事もそういう目で見ているのではないかという疑念がある。保護猫って本当に猫?家出少女達だったりしない?一昔前のドラマなら、そういう女の子達を口封じの為に撮影したビデオテープが山積みにされた部屋とか出て来そうな雰囲気を匂わせているというか。これで善人だったら吃驚だが。

 

第7回「14才の放課後」

第6回で沢木先生の疑惑を巡って桃恵と3人との間が険悪な雰囲気になっていたが、その辺の葛藤は引き継がれない…、というよりアイの復学がイベントとして大きいのと、それを理由に絶交して大丈夫なレベルの危機の中にはいないという事なのかもしれない。あとは第5回の「女だから感情が爆発するんだ」がここでも生きてくるか。アイの登校前の制服姿のお披露目から放課後に場面が飛んでいるが、そのうち小糸ちゃんを暴行してた集団を殴り飛ばす校内暴力回とかあるんじゃないかと思ってる。現実でも腹筋割れてきたが複数回描写されてる理由が気になってるので。

リカの父親って存命なんだろうか…?アイは「パパと月1回くらいは会っている」と言うが、リカの思い出の父親も(お財布の件はともかくとして)そこまで薄情な人間には見えない。というか、そういう事をドライブの途中に娘に伝えてる時点でリカはそれなりの年齢(少なくとも5-6歳)であるハズだが、まったく覚えていないというのも引っかかるし、ドライブの事実がある以上は父親が誰かわからないという母親の言葉は嘘だ。Aパートで「嘘吐き女」と憤っていたのもこの辺りの事情に拠る気がする。ただまあ、あれが他人という可能性もあるけれど。

ねいるは両親は初めからいないと言っていたが、では、妹との血の繋がりは?双子?現状、桃恵を除く3人に父親、または両親の不在が確認されたが、では、桃恵はどうなのか?

 

第8回「明るい友達計画」

総集編と聞いてがっくし来て、一週間手をつけられていなかったのを9話直前に視聴。わかりやすいと言えばわかりやすいけど、そもそも、“ストーリーテラーであるアカと裏アカを信用して良いのか?”という根本的な問題があるので内容を鵜呑みに出来ない。というか、わかりやすいというよりあえて当たり障り無い内容を語っていたような…?彼らが何者であるかには触れなかったし、“小糸ちゃんは生き返るんだね!?”というアイの疑問に答えない形で8話は閉じられている。

 

第9回「誰も知らない物語」

みんな家に遊びに来ないかと誘うねいるに動揺(からかってるだけ?)するリカと桃恵、そして喜んでいるアイ。この時は「なんとなく」と話していたねいるだったが、その理由は確かにあって、親友の寿の生命維持装置を切る…その行為を見届けて欲しかったのか、それとも止めて欲しかったのか…。臨死実験というと狂気に聞こえるかもしれないが、死を解けば生命の謎が解けるかもしれない。直近だと『Q.E.D.証明終了iff』15巻でそういう話があった。

女の子として泣いていた桃恵に、父親に会いたがっていたリカに、誰かに寄り添う事が出来るアイは遂に、ねいると一緒にワンダーエッグの世界ではない現実で人に死に寄り添ってしまった。コックリさんと同じ様に、どちらが指を押し込んだのかはわからない。

コックリさんの件から、小糸ちゃんが好きだったのは本当はやはりアイで、閉じ籠った彼女を抱きしめたのもモデルを辞退させようとしたのもアイの一番になるためだった…という可能性を強く提示された気がした。双方が“アイは/小糸ちゃんは沢木先生が好き”と思い込んでいて、小糸ちゃんは自分ではなく沢木先生を見ていたアイに絶望した?実際、小糸ちゃんは自殺する事でアイの心に巣食い“一緒に死んでと言われたらそうした”とアイに言わしめた。死が誘惑している…。

アカと裏アカが「自殺の原因は自分達」と言った事に驚きは全く無いが、ねいるの秘書があちら側だったのは完全に予想の範囲外。ただ、寿のエッグがねいるに渡るよう操作した事からそれすら本心かはわからない。

 

第10回「告白」

なんか今回間違えて2話分の容量の話を詰め込んでないですか?

アカと裏アカはファンタジーな存在ではなく一応人間、そして、ジャパンプラティ創始者かつ科学者であり、現在は肉体を捨てて脳だけの存在になっているという。……自殺した少女達が生き返るの意味や価値観に絶対的な齟齬が生じる予感しかないのは気のせい?水槽に浮かぶ脳幹を指し示されて、「ホラ、君の友達だよ?モニターを見てご覧、脳波が回復しているんだね。君に何か伝えたいことがあるようだ」とか言い出しそう。実際、桃恵はゲームをクリアしハルカは生き返ったと言葉だけで説明されるが、現実世界でのハルカの描写は一切無い。

ゲームクリアした桃恵の前に現れたハイフンと名乗る死神然としたナニカ。エロスとタナトスはリビドー、デストルドーとほぼ同義の心理学用語で、それぞれ生の欲動、死の欲動などと訳される。自殺がタナトスの直喩であるならアカと裏アカの最後の会話の意味はまあ言葉通りの意味で素直に受け取れば良い。だが、ハイフンもフリルも心理学や精神医学の知識としては少なくとも自分は聞いた事が無い。あれがタナトスであったなら話は単純だが、ハイフン……?

人間の性別ってなんぞやというのは過去に記事にしたので、私がどういう捉え方をしているかについてはそちらを参照して頂ければ。

LGBT含め性別とは何かという3軸評定に関する個人的一考察 - 六連星手芸部員が何か書くよ

今回の場合、おそらく最初の相手は「身体:男、精神:女、心理:不明」、薫は「身体:女、精神:男、心理、多分男」にそれぞれのスペクトラムが寄っているだろうと思われる。ちなみに桃恵は「身体:女、精神:女、心理:女」です。劇中で「心は男」と薫が言っていたけれど、ここでいう心というのはおそらく精神=脳の事なので、心理的な趣味嗜好を意味してはいない。


※世の中では精神疾患を心の病気と表現したりしますが、精神疾患は脳の病気で心理疾患とは明確に区別されます。それと同様です。精神疾患について気の持ち用とか心の弱さとか躾とか言われますが、全く違います。脳の器質的な問題です。


薫は「来世で逢いたい」という旨の言葉を遺して桃恵にキスをして消えてしまう。別れよりも、自分に好意を向けてくれた嬉しさにはにかむ桃恵に何となく危うさを感じた。……感じた直後の惨劇だった。

アイが本当に復学したかは半信半疑だったが、学校には通っている事が今回で確定。しかし、アイのオッドアイを魅力的だと言って絵のモデルにしたのはアイが不登校になる前の話だ。にも関わらず個展での会話からは、沢木先生の好意の主体は最初からアイのお母さんに向けられており、それをベースにしてアイの大人の姿を思い描いたとしか考えられない答えを返している。沢木先生はアイに対して「とても魅力的だ」と評したが、これは彼女の“オッドアイ”を指してそう言っていたハズだ。だが、絵の前提にあるのはお母さんに対する好意感情だ。何かがおかしい。第1回で語られた「眼と心臓が潰されたら死ぬ」というルール、なぜ頭ではなく“眼”なのか。

 

第11回「おとなのこども」

フリルの正体は人間であった頃のアカと裏アカが創り出したAI/バイオロイド…多分バイオロイド。彼女は二人と一緒に幸せな生活を送っていたが、やがてアカが結婚して子供が生まれようという頃、「浮気をした旦那と誘惑した相手のどちらを憎むのか?」という問いを裏アカに投げた後にアカの妻を殺害して地下室へと幽閉される。その後、裏アカの推測によれば、彼女はネットワークに何らかの介入を行い、母胎から取り出されて14歳まで育ったアカの娘を自殺させ、同様にして多数の少女達を自殺へと誘引していた。ハイフンやドットはフリルが地下室に幽閉される前に研究していたモノのアバターと思われるが詳細は不明。この辺のあらすじは『serial experiments lain』を通っていればすんなりと頭に入ってくると思うが、いやホントにあのアニメは20年以上経っているのに全く古くならない。

10話ラストの「小糸ちゃんは何故自殺したんですか?」というアイの問い掛けに対する回答は今回では開示されなかったが、これは上記の「浮気をした旦那と誘惑した相手のどちらを憎むのか?」とイコールであると思う。小糸ちゃんが好きだったのは沢木先生なのか、それともアイなのか、いずれにせよ、どちらを憎む事も出来ずに自殺したのではないか。

自殺した少女を生き返らせる……、クローンかバイオロイドのボディに自殺の原因を取り除いた脳を移植するみたいな方法が取られるかもしれない。だが、小糸ちゃんとねいるの妹は転落死、ハルカはおそらく轢死なので脳が無事とは思えないので、仮にこの方法を取るのであれば脳ごとクローニングしてエッグの記憶を付与するか。


次回、最終回。本当に終わるのか……?

 

第12回「負けざる戦士」

まず初めに。名目上最終回だけど、物語を畳む意図が全く感じられなかったので、第11回の過去編と併せてようやく舞台と役者が整った上での折り返しという感じがする。3ヶ月後の特別編が発表されてなければキレてた。ただ、もしあと1話の尺で畳めるなら総集編挟んでないだろうし、特別編で折り返した後にもう1クールやるんじゃなかろうか。と、いうのも、脚本の野島さんはドラマ畑の方なので、ドラマの1クールってアニメ換算だと2クール分の容量なんですよね。なので、やりたい事を同様に詰めたなら尺が倍必要。

※とか書いてる時は気付かなかったが、監督のTwitterの発言から1話分足りないという…。マジか…。

というわけで2クールではなく最終話持ち越し。率直に言って、作画崩壊とかで内容が破綻した状態のモノが世に出るより、配信主体の現在ではこっちの方が断然良いです。だったら上の文章黙って書き直せよって思われそうだけど、それをするとこの作品の感想っぽくなくなるのでそのままで。

アイのワンダーエッグの中身はまさかのアイ本人。アカと裏アカによればパラレルワールドの彼女という事だが、では今までに助けた少女達も同様なのか?だとすれば、アイがそうであるように、パラレルワールドでは自殺したがこの世界では生きているという可能性も有り得る?

“あなたに出逢っていたら……”

そう言って消えていった少女達とこの世界でまた会えるなら、エロスの戦士は死の誘惑から今度こそ彼女達を引き戻せるのではないだろうか?桃恵と薫君の再会エンド来るか……!?

アイのワンダーキラーはやはりというか沢木先生。ただこれ、正確にはもう一人のアイのワンダーキラーなのでアイの世界の沢木先生とはイコールではない。というのも、第10回の考察で触れた通り、沢木先生はアイの中にアイのママの持つ魅力を見出してる節があるので、今回のワンダーキラーのロリコンみたいな発言と整合性が取れない。アイにとっては疑念かもしれないが、もう一人のアイにとってそのトラウマは事実。もっとも、トラウマ=心的外傷は客観的事実と必ずしもイコールではない(※本人にとっての傷付きは決して嘘ではない。それは断言しておきます)ので、もう一人のアイの世界の沢木先生が実際にああいう事を言うような人かはわからない。というか、小糸ちゃんについて言及してた(もう一人のアイは小糸ちゃんを知らない)事から、あのワンダーキラーにはアイの内面がやはり反映されている。まあ、それはそれとして私はまだ現実の沢木先生に対して小糸ちゃん絡みの疑念は持ってますけどね……。

アイが小糸ちゃんに誘われて濡れた靴を脱いで裸足で屋上へ向かうシーン……、ストレートにわかりやすい死の誘惑。第3回時点のアイなら一緒に飛び降りていた。もう一人のアイは小糸ちゃんに出会っていない。それで誰にも相談出来ずに自殺した……と。アイの場合、小糸ちゃんが死の誘惑からアイを思い留まらせた?それとも、小糸ちゃんがアイの身代わりとなって死の誘惑に誘われた……のか?

3人目のフリルの配下はクレジット表記によればキララ。「キラキラ欲しいの」と言ってもう一人のアイのオッドアイを抉り奪った。片方とはいえ眼を奪われたもう一人のアイは無事なのか……?

クレジットにフリルと書かれていて(出て来たっけ?)って思ったらカウントダウンの声がそれ。なので、自殺そのものにどう関わったかは別として、このゲームに今でも彼女本人が介入してるのは間違いないと思われる。

特別編(完結編?)は3ヶ月後。座して待て。

 

特別編「私のプライオリティ」

2クール分の構成のうち1クール分しか消化されてないと上記したが、その予想が当たってしまった結果になった。広げられた風呂敷は畳まれる事なく物語は完結しなかった。リカと桃恵との物語が「自然消滅しちゃった」なんてモノローグで終わってしまうなら、だったらそれまでに費やされた物語や感情は何だったんだという失望や徒労感を自分は感じてしまった。アイとねいるを中心に物語が進行し、フリルや寿がこんなにも重要なファクターを占めていると最初から決まっていたなら、だったらアイとねいると併せてこの4人で物語を構成するのではダメだったのだろうか?

小糸ちゃんの死の真相もここまで引っ張った上で、沢木先生の言が正しいのであれば“素行不良の問題児がアイを利用して沢木先生に取り入ろうとしたが失敗して死んだ”というモノだった。いや、自分自身、沢木先生への疑念と小糸ちゃんへの疑念の両方を持っていたので別にその真相に不満があるわけじゃないんだけど、ここまで引っ張った上でのこの救いの無さは、一体何をメッセージとして伝えたいのかを掴みかねている。一応、時系列としては死の真相をアイが聞いたのは個展の際で、その後、12話のねいるとの会話である「嘘の友達でも私は救われた」に繋がると思われるので、救いが無いわけではない。無いわけではないのだけれども、先に救いを描いた上で絶望で上塗りしてるからタチが悪い。

ただ、自分に対して腹立たしい事に、第1回に考察した“引いたガチャを数揃えて石とかに変えて、有象無象の友達を消費し尽くした果てにSSRの親友を引きに行く”という予想そのものは完璧に当たっていた。ただし、その対象は“小糸ちゃんではなくねいる”だった。しかも、その有象無象の中にリカと桃恵も含まれてしまった(ように見える。ここで終わった場合)。

ねいるもフリル同様にAI(バイオロイド?)でこちらは寿が“あいる”に似せて作ったモノだった。じゃあ、どうしてねいるはあいるを妹と呼ぶのか。ねいるは自身を「人工授精で生まれた」と言っていたので、自分自身がAIだと知らないのかもしれない。アイとリカ、桃恵は親友を生き返らせた(実際にはパラレルワールドから連れて来られた)後に帰還したが、ねいるはあいるを連れて来た後に帰って来られなかった。これはおそらく、ねいるが例外なのではなくアカと裏アカの作ったシステムに対して今度はフリルが干渉した結果であると思われる。寿がしれっとパラレルワールドからこの世界にやって来ているが、彼女は元々そういうキャラクターだし、別に世界に干渉するシステムがアカと裏アカの構築したモノだけとは限らないので、まあそういうモノとしか。

ねいるを“親友を欲するアイ“と”同族を欲するフリル“で奪い合うという構図が出来あってさあこれから!!……という所で終わってしまった。そんなのアリか……。前半総集編の尺があるなら物語を完結させて欲しかった……。ただただ話が終わっていない……。このクオリティでアニメを創れるスタッフは二度と同じメンバーでは集まらないかもしれないのに、その機会を逸してしまったのは損失だと思うし、自分はただひたすら残念に思う……。