シャーロットと逸れ、殺気立った大人達の喧噪の中で、私は息を殺し、部屋の隅で縮こまっている事しかできなかった。シャーロットは無事だろうか、私はこのままどうなってしまうのか、様々な感情で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。その時、扉が激しく開かれ、革命軍に囚われていた王と王妃が処刑されたと兵士によって告げられた。その瞬間、大人達の視線が私に集まり、私は息を飲んだ。私はどうする事も出来ず、大人達の中で、唯一見知ったクロフォード夫人に縋るように顔を向けた。
「プリンセス……、あなたの、お父様とお母様が、亡くなられたのです……」
「私の、お父さんと、お母……、さん?」
私は、クロフォード夫人の言葉を反芻した。私の……?違う、それはシャーロットの、お父さんとお母さん……。シャーロット……、シャーロット!!
「そんなっ…!!私……違う、いや、そんなの、そんなの……、いやぁああああああああ!!」
泣き叫ぶ私をクロフォード夫人が抱き留め、私をなだめあやすように声を掛けた。違うの。そうじゃないの。私が掛けられているこの優しさしも慰めも、本当は私のモノじゃないの。本当は、全部シャーロットのモノのハズだったのに……。彼女は今、この残酷な現実に独りで打ちのめされている。そう思うと、涙が止まらなかった。
私はいつのまにか、泣き疲れて眠ってしまっていた。クロフォード夫人をからかい、一緒にピアノを弾いて、絵本を読み聞かせてくれたシャーロット。午後の微睡みの中で、いつも隣で手を握ってくれ、一緒に眠ったシャーロット。彼女を求めて伸ばした手は空を切り、私は部屋に独りだった。彼女がいないこの部屋のベッドは、私には大き過ぎて、そして、ひどく冷たかった。
やがて、革命の火が消え、国が別たれた事で、シャーロットが嫌がっていたレッスンが始まった。私は何一つ満足にこなす事が出来ず、私が本物のプリンセスではないと、ついに知られてしまう時が来たと思った。しかし、可哀想に、お労しい、プリンセスはまだ幼いのに、誰もがそう言って、私に無理強いはしなかった。両親を亡くしたショックでプリンセスは気が触れている、皆、そう思っていたようだった。
何も持たない空っぽの私を、シャーロットが、ずっと護ってくれていた。