六連星手芸部員が何か書くよ

基本的には、ツイッターに自分が上げたネタのまとめ、アニメや漫画の感想、考察、レビュー、再現料理など。 本音を言えばあみぐるまーです。制作したヒトガタあみぐるみについて、使用毛糸や何を考えて編んだか等を書いています。

二次創作小説

続く夜の話

ウインドチャイムを完成させツリーハウスに無事飾り、そろそろ一番星が顔を出すこの時間、私はせるふと並んで帰り道を歩いていた。行きはこっそりせるふをスクールバスに乗せたのだけど、帰りでは私がうっかりして、作業を終える頃にはバスの時間はもう終わ…

あなたのにおい

「眠った?」「ええ……」 泣き疲れて眠るなんて、時々この子は本当に子どもみたいな姿を見せると思った。 「初恋……、なのかな?」 遠慮がちにニカがそう言った。だから、多少の浮気くらい許してあげるって言ったじゃない。 「水星ってこの子の他に子どもいな…

そして、僕は君が大好き

「おーいお前ら、天気ヤバそうだから先上がりな。特にぼっちちゃん、電車止まったら帰れなくなるだろ?だから店長命令だ」 ステージの入れ替えのタイミングでお姉ちゃんがぼっちちゃんたちにそう声を掛けた。今日の空模様は朝からずっとどんよりしたもので、…

潜熱に浮かされて

「それにしても、息つく暇も無いわね……。式典コンサートの準備にもう少し専念させて欲しいわ……」「うん……、編曲間に合うかな?」 取材先から移動する車内でそうミラーシャがこぼした。悲しいことがあってもスケジュールは待ってはくれず、忙しさに目を回す日…

本音を隠して

中学生の頃から、ずっとそうだった。彼女はいつも、俯き加減で本読んだり手芸に没頭したり、とにかく一人でいることが多かった。クラスメートとも殆ど交流しないし、事務的なこと以外で誰かと話をしているところも名前を呼ぶところも見たことが無かった。目…

私を撮ってよ

今日はほのかちゃんに誘われて浅間山に登山に来ていた。なんでも、高校で入った写真部で課題があって何か撮って提出しないといけないらしい。 ほのかちゃんは山の風景と、それと私をモデルに景色を背景に何枚か写真を撮っていった。でも、どうにもしっくり来…

大人の言葉〜黒鉄の魚影 幕間〜

(ーーーホント、待たせるの好きよね) そんなことを考えながら江戸川君の背中を見送ると、私はふと自分に向けられた視線に気が付いた。 「え、っと……、なに?」 一体いつからこうやって見られていたのだろうと思いながら、私は、視線の持ち主の直美に向き合っ…

イチョウの花言葉〜黒鉄の魚影 追演〜

私は、イチョウ並木を彼と並んで歩いていた。この光景は以前にも、そう、吉田さんとうさぎの様子を見に学校に行ったあの時のものだった。博士が初恋の相手を見送った後、彼がイチョウの花言葉を口にする姿がリフレインした。女心なんてちっともわからないく…

私の大切な幼馴染み〜黒鉄の魚影 次幕〜

帝丹高校の期末試験を来週に控え、私たちは学校帰りに制服のままポアロで試験勉強に励んでいた。もっとも、実際に試験勉強をしているのは私の目の前で課題と睨めっこをしている十年来の親友だけで、私は喫茶店の雰囲気にそぐわない医学書を読みながら彼女の…

優しくて残酷なあなた

「灰原さん、江戸川君に今日のプリントを届けてもらって良いかしら?」 頬杖をついて主人の居ない空席を眺めていた私の元に担任の小林先生から声が掛かった。当の机の主は今日、風邪をこじらせて寝込んでいた。小さくなっても相も変わらずいつも事件に首を突…

ker - 六連星手芸部員 - のpixivバックアップ

個人サイトの時代に戻るとか一部で言われてますが、今更そんな面倒な事する人いるのだろうか……?とかぼんやり考えた結果、今の環境で一から個人サイトを立ち上げるくらいならブログをデコった方が遥かに容易だろう、と思い至ったので実験です。別に移行する…

天使の惨禍

ーーーあの日の、夢を見た。 自分の手の中で乾いた音が響き、硝煙と錆のにおいが立ち込めていた。ひたひたと足元に生暖かい水が這い寄り、堪え切れない吐き気が私を襲った。 私は生き延びる為に、盗みもした、人を騙しもした。そして、それらとは比べ物にな…

二人の共犯者

お城には犬がいた。アイビーと名付けられた干し草のにおいがするその犬は、シャーロットとはぐれて兵士達に運ばれてきた私の側に寄り添った。しかし、何かに気付きハッとして、また崩れた井戸の方へと駆けて行った。心細さでどうにかなりそうな私の元に、王…

天使の加護

シャーロットと逸れ、殺気立った大人達の喧噪の中で、私は息を殺し、部屋の隅で縮こまっている事しかできなかった。シャーロットは無事だろうか、私はこのままどうなってしまうのか、様々な感情で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。その時、扉が激しく開か…

すき、きらい、だいすき

「みさきちゃんのばか!!もうしらない!!」 私が脱獄トライアルの帰り道にドリーと二人で買い出した食材を冷蔵庫に詰めていると、みさきちゃんにお土産を渡すと弾んだ声で言っていたのとは一変したドリーの声がリビングから響いてきた。おそらくはあのストラッ…

対称喪失

「あの子たち、結構気落ちしてたわねぇ……」 ある日、派閥メンバーたちが学舎の園の中でこっそり飼っていた猫が死んだと操祈ちゃんが言った。動物とコミュニケーションが取れる能力者曰く元々高齢の猫ではあったらしいが、それでも、そういった事柄にあまり触…

どっちかなんてえらべない

「ネェネェ、ドリー?早く選ばないと約束の時間に遅れちゃうよ?」「だってみーちゃん、まさかドーナツにこんなにしゅるいがあるなんておもってなかったんだもん」 そう言ってドリーがシスタードーナツのショーケースと睨めっこを始めてから、かれこれもう5…

貴女に感謝の花束を

『貴女に感謝の花束を』 「一体全体今日はどうしたんですの?」 私はドーム状のガラスの花瓶にルーンを刻む手を止め、作業机を挟んで対面に座っている汐里さんに苦笑しながら声を掛けた。より正確には、両手で頬杖をついてニコニコしながら私を見ている汐里…

ルームメイト

「楓さん、あまり根を詰め過ぎるのも良くないですよ?」「今は、こうして手を動かしていたんですの」 そうさく倶楽部の部室を貸してくれた六角汐里さんの心配する声に対し、私は手元から視線を動かさずに言葉だけを返した。夢結様が発端となって始まった梨璃…

渚にて

「梨璃、落ち着いた?」 膝枕した梨璃の頭を手櫛で髪をすくように撫でながら尋ねると、梨璃は小さくコクンと頷いたーーー。 ーーーあの時のように、月明かりが照らすこの部屋で目を覚ました梨璃は、しかしあの時とは違い、私の姿を認めると酷く狼狽した。 “…

葡萄畑の匂い

この世界で今年もまた誕生日を重ねられる、それはとても幸せな事であり、ましてや、日々ヒュージと相対して命を散らすリリィにとってそれは尚の事だった。そして今年はその特別な日に憧れのお姉様と一緒にいられる、これまでに迎えた誕生日の中で一番幸せな…

気遣いのお茶会

どれだけ時代が流れても暦やカレンダー、それに倣った人々の生活習慣が無くなる事はなく、その点で今日は授業の休講日かつレギオン当番もお休みの日という文句無しに花丸の休日だった。そして、これらは滅多に被らないともあれば、一柳隊のレギオンメンバー…

彼岸にて

「だいじょうぶだよ。梨璃と夢結は私が帰すから。ありがとう、梨璃」 コツンと触れ合ったおでこの温もりは、まばたきをするような一瞬にも永遠にも感じられた。しかし、やがて梨璃の目覚めの時が来て、その温もりは熱を残してフッと消えたーーー。 『彼岸に…

猫と微睡む

講義の合間にいつもの木陰で二人で寝転がり猫達と昼寝をする、そんなありふれた日常は以前より尊いものに感じられた。競技会から、そしてあの日からまだ日は浅いのに、ここでこうしているのは随分と久し振りな気がした。 「なぁ、梅先輩」「んー、なんダ?」…

嫉妬

塞ぎ込んだ私の心を開いたのは、夢結だっだ。塞ぎ込んだ夢結の心を開くのは、自分だと思っていた。 『嫉妬』 私が遠征から帰って来たあの時、まず初めに視界に飛び込んできたのは、窓硝子に写り込む涙を流す夢結の姿だった。美鈴様との思い出の桜を遠くに眺…

人魚はなぜ、少女の守護天使になったのか

「ーーーこっちおいで」「ん……」 結梨がいなくなって、梨璃が酷く落ち込んで……。一柳隊の皆も、もちろん自分もアンニュイな気持ちを抱えて、こうして誰かに寄り添っていたかった。 「のぉ、百由様……」「なぁにグロッピ」「あやつは、結梨は……、どうして一人…

やさしいまぞく

私が初めて桃と出会った時の印象は、背が高くて大人っぽくて、それにクールでカミソリしてて、そんな感じでとにかく宿敵感に溢れていました。でも、今こうして私の目の前で静かに寝息を立てているあどけない顔からは、そんな雰囲気は微塵も感じられません。…

Pork and Tomato Stewed hamburger steak for Dinner

このまちで暮らす私たち魔法少女やまぞくのボスであるシャミ子は、側から見るとお世辞にもハイスペックとは言い難い……、いや、むしろ色々とポンコツの類に入るのかも。今だって“桃は私が見てないとすぐに宿題をすっぽかすんですから”なんて言って一緒に勉強…

魔法少女のブランケット

私は、物心ついた時にはもう施設で暮らしていた。両親の名前も、顔も、声も知らなかった。施設の職員が冷たかったとか環境が良くなかったとか、そういう事があったわけではなかった。でも、自分には家族というものがよく分からなかった。同じ血や生活を共有…

アルデバランを探して-新版-

「今日は誘ってくれてありがとねー」「また誘ってくれよな」「うん、今日はみんな来てくれてありがとう」 天文室での観測会が終わりの時間となり、一人、また一人と帰って行った。本当なら流星群のピークはまだまだ続くから、叶うなら夜通し星を眺めていたか…